
ウレタン塗装って、いざやろうと調べると、プロの完璧な手順とか出てきちゃって、何から何までそろえたり、ルールを守らないと出来ない様に感じてしまう。

かもね、それが敷居を高くしている。かといって動画なんか見ても、ほんとにこれ正解なの?って思っちゃう(知らないから)。そして、みんなそれぞれ少しづつ違うこと言ってる。

なんでかってさ、結局それなりで良い人とプロの人に別れちゃってるんだよ。
だから今回は「自宅でプロ級に塗りたい人」が最低限必要な知識に絞って解説します。

おー!ありそうで無かったね
ウレタン2液塗装は、強固な被膜でプロも使っている塗料ですが、その特殊性や手間などに関する敷居の高さから、なかなか手を出せずにいる人も多いと思います。
ここでは、私が自己流で今まで実践してみた経験からの「2液ウレタン塗装の基本」を公開します。
これまでの失敗の積み重ねと、DIYと言う過酷な環境下でのリアルをベースに解説します。
ただしっ!一切のクレームは受け付けません!!(笑)。
カウルを完璧に塗装する準備

塗装にはまず最低限換気のできる、囲われたスペースが必要です(部屋を決める)。
そして、一番に考えるのは塗装ブースのサイズです。
これはプラダンとガムテープと換気扇でも完成可能です。
何だったらプラダンの代わりに、普通の段ボールでもなんとかなります(使い捨て前提)。
高価な道具をそろえるまえに、塗装ミストを封じ込め、確実に塗装に集中できる環境を作ることを優先してください。
ガンやコンプレッサーなどを揃えるのに夢中になってしまい、ほかの物をついつい忘れがちですが、塗装中は色んなものが必要になるので、家の中からかき集めてきてください。
一番大量に必要なのは箱ティッシュ(トイレットペーパーでも良い)だと思いますが、一番先に必要なのはニトリル手袋です。
お約束

以下塗装作業全般におけるアルアルですので、念のため書いておきます。
- 周辺を掃除して埃の無い綺麗な状態を作りましょう。常に掃除が基本です。
- 外れるものは全部外す。そうでないものは丁寧にマスキングすること。
- 作業分量は、下地作りとマスキングに9割、塗装は1割と思ってください。
- ウレタン塗装はある程度の湿度でも塗れますが、雨風の入ってこない場所で塗りましょう。
- ペイントの際は、大小に関係なく必ずマスクを着用しましょう
- 汚れても問題ない恰好をしましょう。毛羽立ちやほこりの出ないジャージ素材が最適です。
- 火気厳禁です。守れない人は塗装をしちゃいけません。
- 換気を十分に行いましょう。入ってくるところと抜けるところの2か所を確保してください。
- 塗料の余りはポリカップにそのままにしておけば、プラスチックごみとして捨てられます。
- 塗料のフタはしっかりと閉めて保管しましょう。暗所に保管すれば2~3年普通に使えます。
- スプレーガンは使用後必ず清掃しましょう。
- 対象物の静電気を取り除き、しっかりとほこりを飛ばしてから塗装しましょう。
- 塗装直後は埃がでるので、特にティッシュペーパーなどを近くで使ってはいけません。
- コンプレッサーから出る水分などが、塗装中に出ない様にセパレーターを使いましょう。
- 時間には余裕をもってゆっくりと順番に塗装しましょう。
- ミスしたり間違っても、慌てて触ったり直さないようにしましょう
以上の事をしっかり守って(注意して)塗装作業に入りましょう。
素材の特徴

まず、相手となる素材の特徴を知っておきましょう。
はんだごてを片手に溶かしてみると、それぞれの物性が驚くほど違う事に気が付くでしょう。
特にABSとPPの見分けは難しく、PPの方が扱いとしては難しいです。
ABSは粘り気がある一歩で脂分が強い印象です。
PPの方は溶かすとサラサラしており、ABSよりも更に柔らかく体積も小さい印象です。
PPは溶着に向いておらず、サッパリ強度が出ないので、あまり溶着には向いていません。

ABSはメインの部分のカウリングに使われ、様々に塗装されていることが多いのですが、PPはアンダーカウルやリアの泥除けなど、影になって目立たたない部分+汚れるのが前提の部分に使われており、大抵は塗装されず素材のまま使われています(主に国産バイクの話)。
素材の種類
カウル加工をする際に相手になる素材は、大まかに以下の通りです。
特徴を頭にいれておき、適宜対応しましょう。
ABSは基本的には塗料をはじく上曲がる素材なので、ヤスリで足付けした後にミッチャクロンを塗布することを強くお勧めします。
名前 | 素材の種類 | 使われている場所 | 特徴 |
FRP | 不飽和ポリエステル | ヘルメット レース用カウル | 衝撃に強く加工が容易だが、一定の力で破断する。 パラフィンを含んでいる場合は一度荒らさないと 塗料の密着が良くないので注意 |
ABS | アクリルブタジェンスチレン | カウル フェンダー サイドカバー | 衝撃に強く中々破断せずに削れる。 溶剤には弱く溶けてしまう。 荒らさないと密着が良くない |
マスキング
マスキングを制する者が塗装を制すると言っても過言ではありません。
実際にマスキングが下手な人に、塗装が上手かった人はいないからです。
マスキングテープには様々な幅と粘着力が存在するので、必要な物をそろえましょう。
私の場合は、ヘルメットのフチゴムが中々マスキングで粘着しないので、それ用に強粘着のピンクのマスキングテープを買っています。
それ以外は、3Mの黄色い定番品で幅違いで3種類ぐらいをストックしています。
紙のマスキングテープを中心に、曲面用のラインテープ、広範囲を一気に覆うための建築用養生マスカーなどを組み合わせると経済的です。
よく新聞紙や要らない広告でマスキングする人が居ますが、それらは油分を含むインクを使っているので、マスキングしている最中に何かの拍子で塗装面に接触してしまうと、せっかく脱脂した面に油を付けかねませんのでお勧めしません。
シンナーとアセトンの違い
「シンナー」は「薄め液」の総称で、英語でいう所の「薄めるもの」です。
「アセトン」は、シンナーの原料の一種で揮発性が物凄く強いもの。
シンナーは塗料を溶かし、且つ乾いてゆく速度を遅くする為の、アセトンにいろいろな物質が混ぜられています。
シンナーにもいろいろあるので、塗料メーカーが指定した以外のシンナーで薄めると、様々なトラブルが起こると思っていた方が良いです。
アセトンはFRP作業時に使った、ベタベタになった刷毛を洗うときに使う、溶解性・揮発性ともに強い溶剤で、特定のシンナーの原料に使われています。
ガンを洗うにはシンナーでうがいをさせるのが普通ですが、アセトンの溶解性には適いませんので、どうしても取れない汚れなどがある場合は、アセトンを使うのも手です。
やってはいけない事

一度はやってしまうと思うのですが、完成を焦るがあまり、乾燥が甘いうちに塗装を重ねてしまう事で、このようになってしまうことがあります。
塗膜の層同士が溶け合った上で乾燥スピードが違う状態が生まれ、どちらかの塗膜が片方に引っ張られることで「縮み」と言う現象が起こります。
こうなってしまったは元も子もないので、乾燥時間は十分に取ってから次の工程に進んでください。
私の経験則での乾燥具合は以下の通りです。
- 20% 指触乾燥状態
- 40% マスキングテープを張った跡がまだ残ってしまう
- 65% 普通に触っても問題ない
- 70% 対象からほぼ臭いがしなくなる
- 85% 対象から全く臭いがしない
以上の状態を経てから24時間経過した時点で「次」へ進めます。
上記写真の状態は、70%時にクリアを吹いて「上手く行った」と思っていたら、数時間後に縮みが発生してしまい、これまでの工程が全部無駄になったというシーンです。
まとめ
なかなか教えてくれない「失敗したからわかってる事」が盛りだくさんでしたが、いかがでしたか?
ぶっちゃけ「頼んだ方が安いって事が良くわかった」と言う人だっているかもしれませんが、決して否定しません。
私も実は半分以上そう思っているのですが、自分のイメージを他人に説明する事が出来なかったり、それを考えながら自分のペースで進めることを”楽しい”と思う人も居るかと思うので、自家塗装は全然ありだと思います。
次は、知ても大事な「下地処理」について解説したいと思います。