大まかに出来上がったところで、懸案だったアンダーカウル検討に入ります。
製作過程で一度決定したはずの意匠でしたが、どうしても脳裏に引っかかるものがありました。
このオートバイは、今までの作品には無い程の「腰上のボリューム感」があります。
「これまでのデザイン哲学は通用しないな・・・・」そう直感したからです。
それゆえ、すべての作業が終わってから、最後に考え直そうと決めていました。
まずは写真を撮り、おっかなびっくりPhotoShopで書き始めます。
「こうしよう」と言う考えが0%なので、もうやる気の無さが絵に表れています(笑)。
丸か四角か?長いか短いか?全く考えが無いままに描いているからです。
車体への取り付け部分は決まっているので、そこにもデザインの制約を受けます。
車内への取り付けは、前後にネジ穴があるのでこれを利用する考えでした。
取り付け位置が決まるがゆえに、そこからデザインの発想が始まってしまい、基本は深い舟形にしたくなかったので、船底が結構上に来てしまいます。
ミニマムに考えるとどうしてもマフラーとのクリアランスが取れず、熱干渉が心配です。
何度やってもこの制約に縛られてしまい、しばらく苦しみました。
仕方なく「では大型なら良いのかも」と考え直し、検討し始めました。
前後のボリュームバランスを平均的に取らねば・・・と考えたので、考えるほどに大きくなります。
取り付け位置は外せないので、アンダーカウルの上辺もそこに固定されたままです。
アンダーカウルをせっかく大型にしたのにもかかわらず、デザインを考えるとどうしてもマフラーとのクリアランスが取れません。
これ以上大きくしたら、昭和のカフェレーサーが台無しになってしまいます。
「何か大きな発想の転換が必要だ」と、ようやく気が付いたのでした。
そこからなんと!丸一日苦しみぬいた果てにたどり着いたのがこの形であり、位置であり、大きさです。
それでは、なぜこのような結末になったのか?を解説します。
そもそもStuduioQの作品群は、常に「カフェレーサー」の文法に乗っ取って作成されてきました。
その「カフェレーサーらしさ」と言うものを、デザインと言う観点で言語化すると「常にカウルは塊感を持って、前方寄りにセットされている」と言う事になります。
これは新型XSR900をカフェレーサー化したCGですが、純粋なカフェレーサーとは、このようにシートは極端に短く、リアタイヤが半分も外に飛び出しているような有様です。
外装は、ちょうど平行四辺形の様に斜め前に傾いてセットされており、アンバランスであることを寧ろ良しとしています。
そこへ更に、ライダーが、ガソリンタンクに覆いかぶさるように乗車すれば、その前方寄りなボリューム感は、ますます強調されるという訳です。
バイクが「前へ!前へ!」と言わんばかりの前傾姿勢な立ち姿となり、より一層見る人に「疾走感」を感じさせ「カッコイイ!」と言わしめるのです。
そんな基本に立ち返り、アンダーカウルは、これまでの位置よりもかなり前方にアゴを突き出すようにセットされました。
その上で、後方には全くストレッチせず、寸足らずかのように終わりを迎えています。
そのおかげでエキパイの立ち上がりポイントから、マフラーが丸見えになり、リアのゴチャゴチャ感をすっきりとさせてくれました。
更にそれを強調する様に、前方を僅かに下に傾けてオフセットし、とどめを刺しています。
ボリュームの配置に一つのルールが見えたことで、ようやく楽になりました。
細かいディテールについては、上記の黄色い部分に意味を持たせています。
前方に突き出した顎の角度は「コの字」に前からの風をとらえる様に設定。
後方の滑り台は、フレームの角度に合わせデザインすることで、マッチングさせます。
クリアランスの問題と船の深さの問題がありましたが、ここにも大きな決断が必要でした。
クリアランスをしっかりと取るために、アンダーカウルを一気に4cm下に下げます。
その影響で、カウル取り付け穴はそのままではアクセスできなくなってしまいました。
これをカウル延長などでやると、もう「デザイン」などどこかに飛んで行くぐらい格好悪くなってしまうのでNGです。
ここは苦労してでも、アンダー取り付け用の複雑なステーを作る必要があります。
恐らく製作には困難を極めますが、このデザインやバランスを考えた時、それだけの価値があると考えました。
意匠や取り付け位置がようやく決まったので、今度はアンダー本体のペイントを検討します。
真っ黒でも味気ないし、カーボンで揃えるなんて、何も考えてないみたいでちょっとダサイからです。
ここは「ワンオフ」の強みを見せる絶好のポイントです。
定番パターンでまずは描きましたが、いつもの長さが無いので、どうもしっくりきません・・・・。
試行錯誤の末「前傾姿勢のアンバランスさ」や少し顎を引き、角度が付いていることを強調させるようなデザインに変更し、これを暫定としました。
歪んだものに真っ直ぐに線を引く大変さは、どこかの記事で語った通りですが、ここは頑張ります。
そんな沢山の拘りを乗せ、アンダーカウルのデザインは決まりました。
非常に面倒な作業になってしまいそうですが、このCGを見て、自分を奮い立たせています。
さあ頑張るぞ!。