モデリング:タンクカバー
今回のカスタムスタイルに合わせてタンクカバーをオリジナルで作ります。
大抵市販品のタンクカバーは、キズ防止用のチンガード=純正形状に沿ったものか、もしくはレースで前下がりにならない為のチンストッパーのどちらかですが、今回欲しいのは、カスタムデザインにマッチしたものですので、目的が全く違います。
何でもかんでもオリジナルでやろう!などと言う気概はさらさら無いのですが、ない物は作るしかないという訳で、毎回渋々作っています。
離型の良いアルミテープで養生し、使い捨てのモデリング粘土を使って簡易に成形します。
悩むこと小一時間で完成しました。
ニーグリップを邪魔せず、自然に見えるラインを何度も修正しました。
そもそもニーグリップを強化するという目的がありませんから、タンクのエグリまで面を合わせにいく必要が無い為、張り出しも大きくしません。
市販品はこれが大きく出ており、個人的には少々わざとらしい感じがします。
横から見た時のシルエットを重視した、タンク形状変更のためのタンクカバーです。
そのため、後からデザインする予定のシートTOPとの繋がりも意識しており、決して純正タンクのラインを真っ直ぐに延長せずに、TOPもチンも緩やかな弧を描いて尻下がりに纏めているのが、大きな特徴です。
マスター作成
3D構造物のタンクカバーは、型紙での疑似モデリングが通用しません。
ありとあらゆるところが曲線なので完全にお手上げです。
この場合、手作業の粘土でモデルを作り、それを雄型としてマスター作成用の準備型を作り、準備型で作ったマスターをキチンと仕上げてからから、そこからまた本番の方を起こすという・・・・気が遠くなるようなことします。
要するに、通常の2倍の手間を掛ける必要があると言う事です。
手作業と言っても、人の感覚ほど頼りにならないものはないので、コンターゲージで測りながら進めます。
コンターのラインをPP板に写し取ります。
カットしたパーツを元にまた計測して次のパーツもカットを繰り返します。
何度もカットを繰り返して何を作っていたかというと・・・・・
準備型用のミミを作ってました。
そのままゲルコートしてしまうので、絶対に車両に付かないようにします。
黒ゲルコートした後です。
ノンパラの黒ゲルを、少し厚めに塗っておきます。
ゲルコートは完全硬化するとFRPよりも固く、形状を変えるのも中々苦労する程です。
硬化し終わったゲルの上に、綺麗にマットを築層します。
準備型は、要するに”捨て型”なので5プライ程度でやめておきます。
たった一回の脱型にさえ耐えればよいので、最低限の強度で行きます。
アルミテープの離型力は凄まじいもので、超綺麗に抜けました。助かるなあ。
残った油粘土は、熱いシャワーを浴びせながら擦ると、綺麗に取れます。
産湯に浸かったあとは、凸凹をパテ埋めして、ポン抜き(ブルーの離型剤)を塗りたくります。
薄く塗ったらペイントヒーターを使って乾燥させ、何層かに分けてしっかり塗り込みます。
そうしないと、ずっと乾かない離型剤を伸ばすことになってしまい、青が中々濃くなりません。
これが足りないと脱型しずらくなり、地獄を見ます。
またしても黒ゲルコートです。
これもまたペイントヒーターで速攻硬化です。
かくしてマスター型の元が生まれました。
こいつのサイズを微調整し、パテで面を出したら、ようやくマスターの完成です。
もったいないですが、捨て型はこの時点で廃棄します。
マスターに捨て型のパテがくっついてしまったので、ゴシゴシやりながら洗います。
この時、人間も一緒に風呂に入ると効率がいいです(笑)。
人もカウルもサッパリしました。
粗々で削られたマスターの母材出来たので、車両に合わせてカットしてゆきます。
理想的なラインを片方作ったら、型紙を作って写し取ります。
型紙は所々ハサミを入れながら重ね合わせ、マスキングで留めながら3Dに作ります。
ポコンと膨らんだ3D型紙が完成したら、今度はペコンと裏に返して反対側へ取りつけます。
これで計測せずに、左右シンメトリ―なラインが簡単に見つかります。
黒ゲルに黒いマジックだと見えないので、いつも銀色のマーカーを使ってます。
細いマスキングテープの上からマジックを塗り、テープを外すことでカットラインがはっきりします。
カット中は削り粉が沢山出てラインが良く見えなくなるので、はっきりしているほど良いです。
左右対称に綺麗にカットできました。
接地させてみると、精度高くカット出来ていたことが確認できます。
簡単そうに見えて難しい作業ですが、品質を上げるにはとっても大事なことです。
マスターは分厚く作ったので内側の寸法が変わってしまい、このマスターではタンクに上手く嵌りませんが、外側の形状はこれで間違いありませんので、慌てる必要はありません。
この後は、これを元にマスター型を起こし、最後に製品を少し薄く作って射出します。
タンクカバーは両面テープのみで固定する者なので、ガラスマット+クロスで薄く作ってやり、ある程度タンク側にピタリと寄り添わせることを優先する為です。
オーダーメイドなタンクカバー完成まで、これでようやく折り返し地点です。