迷宮の入り口
SC77は本来絶対SC59より進化した良いバイクのはずなんですが、(カスタムベース的に)何がいけないんだろうか?と疑問を残しつつ、検証を前に進めて行きます。
まずはいつもの如く、カウルのセット位置が前下がりすぎでした。
これじゃあライトで前を照らすことすら出来ないので、夜は走れません。
ライダーも、前につんのめったままじゃ、停車の度に手首へ負担が掛かります。
まともに走れないんじゃ、これはバイクと呼べません。
又、不文律であるフロントアクスルシャフトよりもカウルの先端が「前」に飛び出しています。
青が私のATフィールドだとすると、使徒の分まで浸食する勢いです。
大型のフロントカウルはそのままに、小さなCBR1000RRのボディに何とかバランスさせようとして失敗したという訳なんですが、これでもまだ寸詰まりな感じがするから恐ろしい。
やれやれ・・・いよいよ上手く行く気がしません。
誤魔化して前下がりにし過ぎたせいか?カウルの顎が下がりすぎてしまい、フロントがフルボトムした際は、引っかかって転んでしまいそうです。
いくらバイクが格好が良くても、死んでしまったら何にもなりません。
ノーマルの完璧なデザインを壊すのですから、そりゃアッチコッチで矛盾が起きます。
この手探りが大変であり、また面白い所でもあります。
ふと気が付いたのですが、このRDはとにかく曲線が多いです。
触ってみて、基本は「丸いバイク」なんだと言う事が良ーく分かりました。
私の好みはどちらかというと鋭角にしてゆく方向ですので、あまり好きじゃやないかも(笑)。
カスタムした画像でさえそうですが、本物のCB1100Rはもっと真ん丸でしょう。
オリジナルのカウルは、素材として購入しようにも、中古のボロカウルが余裕で10万円以上します。
シートとアッパーだけで、集める素材だけで30万コースですか、そうですか・・・。
折角買ったそれらを、夜な夜な切り刻んで縫合したり延長したりするんですから、もう傍から見ていると・・・・・頭がおかしいと思われてしまいそうですね。
まあしかし、それがワンオフであり、限られた人のみが可能なイメージの具現化世界です。
気分的には、芸術家が一本の原木から、ノミ一本でそれに合わせた何かを彫り出すのと似ています。
描いていて分かったのは、SC77の決定的なNGポイントは、このタンクが「真ん中で」凸形状になっていることでした。
これには理由があり、現在のオートバイは真横に出ているキャブが無く、その代わりシリンダーヘッドに縦にインジェクターと呼ばれる噴霧装置が刺さっています。
その物理スペースとハーネスの収納などを考えると、どうしてもその上にあるガソリンタンクがあおりを受けるので、ガソリン容量を維持する為には、ラクダのコブのように逃げるしかなくなってしまいます。
大柄なバイクだと、その足りなくなってしまう分は、シートの下に逃がしたりもするのですが、このようなコンパクトなレーサーレプリカの場合、逃げる場所も無いという訳。
キャブが当たり前だった古いバイクは皆全長が長く、タンクは平らだったのはそのせいです。
つまり昔のバイクは縦に伸びることで逃げているけど、今のバイクは上に逃げるしかないって事です。
カウルスワップの場合、この新旧のオートバイの特徴の違いが障害になることが多いです。
このバイクが改造ベースに向いていないのは、唯一この点のみですが、逆にこれは致命的。
まあSC77を剥いて裸にしようなんて人は、そもそもこのバイクを買ったりしないでしょうけど。
発想の転換
気を取り直して、今度はSC59をベースに考えてみます。
SC77に比べればタンク上部に、まだ平原が残っていることが見てとれます。
ロングタンクにしやすそうな造形のタンクは〇、ひねりの無い3本スポークは何とも古風で△。
昔風のバイクを作りたいから古風でいいじゃないか!と思うかもしれませんが、それはレストアならって話であって、私がしたいのはレストモッド。
古い物風味な新しい物が作りたいのであって、ビンテージの復刻や補完ではないのです。
旅先でも故障せず、ブレーキも良く効いて、一発でエンジンがかかり燃費も良く、アクセルを捻ればミサイルのようにすっ飛んでゆくバイク以外は不要です。
話を戻します。
SC59後期のホイールは、社外ホイールか?!と見まごうばかりのデザインとなりました。
しかし、実は3本スポークより重いというのはここだけの話。
バイクのホイールはリムはほぼ同じ重さなので、どんなに細くても。スポークの数が多い程重くなります。
タンクの形状やサポート、ニーパッドの形状が少し変わりましたが、後期の方が前期より更にロングタンク化しやすそうです。
一旦ドラフトは前期型で描き進めます。
フレームのみの姿写真が前期型しか見つけられなかったためで、あまり深い意味はないです。
流行りのアップタイプの後方排気だったSC57に比べ、SC59は原点回帰したのが良く分かりますね。
個性的なマフラーも相まって、マスの集中化を追求したという開発陣のビジョンが良く分かる一枚です。
まずは理想とされるバランスを見つける為に、カウルのリサイズの工数などは一切考えずに、SC77で描いたものを少し加工して、レイヤーを重ねてみます。
ここでは一旦「実現度スイッチ」はOFFにして、自由に画像を変形させます。
何とか出来ました。
このぐらいならなんとか私の美的感覚にも合うかな・・・・と言う感覚で変形させています。
アッパーの前下がり感を改善し、シートの小型化も進め、何とか車両に合わせています。
しかしながら結果的にボッテリとしており、なんだかバイクが一回り小さく見えてしまいます。
その原因は・・・・私がカウルを下や横にドンドン引っ張って伸ばしてしまい、結果的にすべての外装を大きくしてしまったからです。
カウル面積を増やすことで、デザイン上の辻褄を合わせやすくなるのですが、今回は、カウルではなく車両を一回り大きく見えるようにマッチさせるというのがコンセプトなので、一見良いのですが、このやり方は失敗という訳です。
これを信じ込んで作ってしまうと、ハリボテの様なブカブカ・スカスカなバイクになってしまします。
シートはオリジナルのリブを全部バッサリとカットして、何の変哲もないプレーンな造形にして逃げてしまいました(デザイナー的にこれは敵前逃亡であり銃殺刑ですw)。
貧乏くさい古いイタリアンカフェレーサーのようになってしまいましたが、悔しい事に似合います。
だがしかし!これではCB1100R感が全く無くなってしまうので、却下。
はい、誤魔化しましたね、ゴメンナサイ。あり寄りでしたがナシです。
今度は、タンクを赤くすること(色を濃くすること)でまたしても形状をごまかしています。
明るい色(白とか)にすると、造形のアンバランスがバレるのを知っているからです。
要するにまた手抜きですが、これを続けると、実車を作る時に自分の首を絞めます。
これ・・・・過去に経験済みです。ああ、経験が邪魔をする。
御覧の通り、アッパーカウルはもう弄り過ぎな位弄っていて、フロントスクリーンにおいては、べらぼうに角度を寝かせてあります。
これは、フロントカウルのオデコから上をスッパリ切り取って、別な車種の物とニコイチする前提だからです。
基本はSS系のスクリーン(GSX-R1000Rが候補)をそっくり移植なので、好みに合わせスクリーンの交換も可能になる点がメリット。
一旦ノーマル形状のセミロングスクリーンをイメージして描いています。
まあ、何を言ったとてボツなのですが。
逃げちゃダメだ×3
CBRには常に「SP」と言う上位種が居ます。
特にこのSC59のSP仕様は上位種どころか・・・・もう違うバイク?!と言ってもいいぐらいのものです。
最初からシングルシーターでタンデムステップも泥除けも無し、シートカウルが小さすぎて何も入らないから、シートアンダートレイがMOTOGPのように下側にボコンと張り出して耐久マシンの様。
スイングアームはアルミの生地で、フレームはそれに合わせたシルバー塗装。
前後サスはオーリンズでギラ付いている上に、くすんだブロンズ色のホイール(鍛造でもマグでもない)を履く超豪華仕様。
新車どうしなら大きく価格差が開きますが、中古車ならその差額は30万程度にまで接近します。
フレームの色にこだわりがあって、後から足回りを交換するつもりなら、最初からSPの方で始めた方が断然お得です。
あ、因みにSPの足回りは無印には付きません。
オーリンズのピッチに合わせ、Fホイールのセンターハブの幅が違うそうです。
SPと言うモデルはそれほどまでにレーシーで特別なもの。
という訳で(?)CB11000Rの先祖と言えば、このRS1000です。
ヨーロッパで無敵艦隊と呼ばれた名車で、ザ・カフェレーサーですね。
そんな潔さをブレンドすると、こんな感じになるという訳。
中二病的なステッカーを貼りつければ、もはや気分はTOPGUN?AKIRA?RIDEXか?。
アリっちゃアリですが、もうCB1100Rへのオマージュは薄めで、ちょっと品はありません。
これはスチームパンクだ!などと言い張っても、その説明に時間がかかるような気もします。
「転んだので適当なカウルを付けました」と言われれば、存外信じてしまうかもしれません。
小僧感は好きですが、数百万掛けて作る「あがりの一台」じゃありませんねえ。
デザインスタディはまさにこう言った試行錯誤を指して言います。
これは旅の思い出として残しておきましょう。
いつだって本気
さて、そろそろお勉強の時間も終わりにしましょう。
以下、学習過程で発見した、CB1100Rカスタムへの覚悟です。
・顔がデカイ上に幅が狭いので絶対ラジエーターに当たる
・尻が長いうえにエビぞりなので、放っておくと暴走族っぽくなる
・デザインのリファインは、細部の丸と角のブレンドが成否の要
・ベースになるCBRはとても全長が短くでデブ。細くて長いカウルとの相性は最悪。
・カウルがデカすぎ、スワップのストライクゾーンがとんでもなく狭い
・一か所の形状変更が全てのバランスに連動してバランスを崩す
・細部の形状をオマージュするか?強調するか?排除するか?は、統一しないとNG
以上です。
かなりの高難易度カスタムであり、簡単に失敗しやすい危ういバランスを狙う事になります。
恐らく今までのモデルの比ではないぐらいの難易度です。
しかし私もバイクを弄って30年。本気を出しました。
これが現在考えうる私の最適解、渾身の一枚です。
大きく引き伸ばしてみると良くわかるので、皆さんデスクトップに保存して拡大してみてください。
では、解説行きます。
悩んだ末、シートのアイデンティティとも言える、ドルフィンテールを残す方向で一考です。
族っぽくならないギリギリのエアロ形状を残し、角度に気を付けます。
長さを詰めるだけで、タンデム部のBOX形状はそのままのサイズで、CBRの純正LEDテールがそのまま使える様に工夫します。
シートカウルはサイドに無駄にエラが張っており、そこからストンと絞られる変化をそのまま残しながら、乗車に問題ない位置まで持ってきます。
簡単に書きましたが、これはオリジナルを3~4分割してから再度繋ぐなど、かなりの度胸と直感的な作業が必要ですが、逆に言えばまあ・・・腕の見せ所。
ペイントはあまりオリジナルに寄せすぎず、且つギャグっぽくならぬように、オリジナルのR主張強めのロゴは無視して、CBRらしい物へ変更しますが、ちょっとグラデーションは多めでイキってます。
タンク形状は、レーシーまで行かない一歩手前で纏めます。
ニーグリップを意識した縦の面を強めたタンクカバーがあまた市販されていますが、私はサイドの面をしっかり出す形状をオリジナルで作ることで、水平方向の安定を取り、ロングタンクへの視覚効果を増幅させたい考えです。
ホンダのウィングバッジは撤去し、窪みをスムーシングした後に、イエローウィングのホンダマークへ変更します。
カスタムペイントも、エアブラシでグラデーションを入れまくります。
たぶんこのオールペンをガチで完成させるには2カ月は必要です。
逆に2カ月あれば何だってできます。
これが私が考える、アッパーカウルのベストな位置。
現実には存在しない、散々形状を変更したカウルの話なので、ピンと来ないかもしれません。
私はかつて、これほどまでにアッパーカウルを前にセットしたことはありませんが、全体整合を考えると、これが正解だと確信しています。
分かりやすくするために、あえて純正のメーターステー兼カウルブレースを修正せず、正確な位置で画像で残してあります。
純正のカウルブレースはミラーと共締めになっていますが、ご覧のように、このままだとカウルから数センチ下に離れてしまい、空間が空いているのが確認できると思います。
追加でステーを作らねばいけませんが、そうまでしてもこのカウル位置に拘わったという訳です。
サイドのラムエアダクトを出来るだけ隠す意味でも、カウルはこの位置である必要があります。
このカウル位置は、ライダーにはとてもフレンドリーです。
防風効果が高く、小雨程度なら塗れずに済みます。
形状も大きく変更されており、GSX-R1000Rのダブルバブルスクリーンに加え、ワイド化されてエッジがハッキリしたナックル部分、ナックル下のハンドル逃げ部も直線的に四角く切り取られることで、エッジが効いており、延長されたサイドカウルも含め、スクエアに見える様になります。
正面のライト下部の先端も少しだけスポイラー形状に尖らせてあり、いたるところに「丸かったものに角を付ける」変更がされています。
昔の新幹線の様な優しい顔が、ちょっと勇ましい顔になりました。
こんなのRDカスタムじゃない!とおっしゃるそこのあなた。それで合ってますよ。
フロントフェンダーもそれに合わせ、エアロダイナミクスに振ったレーシーな形状に変更。
さあ、これらを踏まえてもう一度じっくり見てみましょうか。
Before
AFTER
これはCBRへの冒涜か。ユーザーへの宣戦布告か。
いえいえ違います。
違う世界線から私は来たんです。