モデリング:アンダーカウル
はて?アンダーカウルとは、一体どんな形だったか・・・・難航するワンオフ作業の中で、すっかり忘れてしまっていましたし、まあ・・・・大した形状変更じゃあるまいしここは問題ないでしょ!と、この時点ではまだ、高をくくっていました。
モデリングには、いろんなものを私は活用します。
動画などでは、よく段ボールで簡易に作り、それに養生テープを貼ってしまうという猛者も居ますが、私はもう少し後工程である「面出し」を省略したいので、PP板を使って精度を上げます。
PP板はABSなどと同じ難接着素材として有名ですが、FRP樹脂なども弾くので離型力は抜群です。
その残接着素材を使ってのモデリングには、強粘着のアルミテープや、時には面を軽くヤスリで荒らしたりしてから、ホットボンドを使ったりと、なかなか手間が掛かります。
時にはカーペット用のブチルテープを使い、薄いPP板同士を張り合わせて、超強度のプラスチック厚板を作り出すこともあります。
とりあえずフルカウルの下側の部分のパーツだけを残し、車両に固定します。
ここから先はワンオフはワンオフでも「現物合わせ」というヤツです。
前提として元になりそうな何かがあり、取り付け位置が精度高く出ている状態を利用して、その形状だけを変形させることで、精度が高いまま一気にワンオフを仕上げる方法です。
車輛への固定が出来ている状態と言う事は、取り付け方法やそれに伴うステーを作らなくていいと言う事なので、作業が大幅に短縮されるメリットもあります。
まず素の状態をチェックします。
特徴的な美しいノーマルマフラーのヒートガードはソリッドなデザインですが、それを延長するラインは、よく見るとガタガタで右上がりであり、水平でもなんでもありませんでした。
その理由はマフラーエキパイの取り回しにあり、アンダーカウルの底が完全に塞がっていないからです。
ヒートガード下もゴチャゴチャしてますが、それにも増してカウル側も複雑に配管されており、ヒートガード側に比べて一段と接近した上で配管を避けています。
上から見下ろしている分には全く気が付きませんでしたが、これではラインも一致しません。
カウル側がなぜわざわざ構造物に近づけた上で、底を閉じずにOPENにしているのか?私にはサッパリ分かりませんが、きっとHONDAにはそうしたかった理由があったのでしょう。
閉じていない=船底がない以上、これをアンダーカウルとは呼べません。
万一エンジンブローした際はオイル受けにならない為です。
PP板が小さすぎて・・・と言うかアンダーカウルが大きすぎて、PP板が足りません。
この時点で分かったことは以下のに2点。
①マフラーヒートガードとカウルは、カットラインが一致せず水平も取れていない。
②紡錘形状のフルカウルの一部分である為、既存カウルは随分と前方向に小さくなるよう、弓なりに絞られている。
今回私のデザインしたアンダーは、そんなに絞りを入れず、比較的塊感のある直線的なものです。
マフラーとの取り合いも含め、それらを水平基調へと調整すると、ノーマルカウルのラインより15mm程度延長した部分に船底を作ることがBESTだと判断しました。
これらは目検ではとても無理ですが、現在は全てレーザー墨出し機が教えてくれます。
純正カウルの取り付け部分を守りながら、カウルの形状のみ変更してゆきます。
絞りを外して水平基調を取ると、こんなにも寸法が変わります。
カットラインは黄色くて細いマスキングテープの下のラインです。
純正カウルはカウル同士がはめ込み式になっており、極力ボルトを使わないように設計されてます。
それはそれで素晴らしんですが、ここが開いたり閉じたり「ちょっと動いてしまう」と、他の部分の寸法が簡単に変わってしまうので困ります。
ここは、プラスチック溶接機を使って、ガッチリ固定します。
必要とあらばABSとPP両方を削って傷をつけてからホットボンドで留めることもあります。
削り粉があるままだとはがれてしまうので、削ったらアセトンでサッと拭き取ります。
アンダーカウル全方が「絞られすぎ」でイメージと合わなかったので、それを真っ直ぐにすると、こんな風に隙間が出来てしまします。
一旦このまま左右均等に固定してみて様子を見てみます。
アンダーの右側だけ先に作り、折り返しの感じを掴んでいきます。
どうにでも出来るだけに悩ましいのですが、切ったり直したり試行錯誤します。
既存のアンダーとの繋がりをもっと自然にしようと四苦八苦です。
結局折り返しは、もっと全体的に細くしないとおかしい事が分かったので、ここは既存カウルごと切って調整することにしました。
再構築:アンダーカウル
破壊している写真はありませんが(←落ち込んでた)、結局全部やり直しました。
アンダーの面を変え、隙間までわざわざ作ったのに、実際出来上がってみたら、マフラーの黒い遮熱版との面が合わなくなってしまい、思い切り飛び出してしまいました(そりゃそうだろ)。
車両に取り付けた状態で見ずに、取り外したまま単体で黙々と変更してしまったのが原因です。
改めて取り付けた状態で修正したところ、遮熱版の下に綺麗にトレイ上にカウルが伸びそうなことが分かり、結局15mm(カウルの隙間も合わせると20mm)の高さで後方まで伸ばしました。
ギリギリ干渉せずに、それでいて隙間はちゃんとある状態。
でも細い幅のままで折り返しで強度を確保。
市販のアンダーでは、考え付いたとしても量産に向いて無いので、絶対製品化しない形でしょう。
逆にワンオフらしくていいかもしれません。
果たしてこれはアンダーカウルなのか?アンダートレイなのか?。
よくわかりませんが、ギリギリ一体型だし船形状をキープしている状態なので、きっとこれはアンダーカウルなんでしょう。
薄くても四方に折り返しがあるので、きっと動きません。
エンド部分も折り返すことで完全にBOX形状となります。
強度も出ますし、歪みも抑制できるので、これはこれで〇です。
面の変更を行ったのでピンクの板で構成を変えました。
フロントのチリトリ形状は壁が立っているので、もう少し寝かせて鋭くしたいところです。
取り付けボルトホールの一部を残して、スパッと真っ直ぐに矯正します。
もうアッチコッチ治すので、一つ直すのも二つ直すのも一緒です(いやちがう)。
左側の状態はこんな感じです。
ノーマル形状のアンダーカウルは、下部分が左右二股に分かれていておりプラプラでしたが、そこに壁と底を付けて連結し、船状にしたことでガッチリします。
サイドスタンドの払いを逃げる為の複雑な形状は、一から作るとなるとちょっと憂鬱ですが、純正の一部流用によって省略します。
左サイドの前の方も、大きく面を変えているので、今は空洞になってます。
取り付け用の穴だけは残し、死守します。
モデリング:FIX
型紙を作る為の自由帳、場見り用のマスキングテープ、いろんな厚みのPP板。
滑らないギザギザハサミや、大振りの裁ちばさみ。
大小の刃の角度の違うカッターや、ぶ厚いPP板を強制的にひん曲げる為のラジオペンチ。
ありとあらゆるものが揃ってないと、PP板でモデリングなんて出来ません。
でもまあ、ホームセンターに行けば大概揃います。
丸一日掛かって、都合4回はやり直しながら、ようやく完成した仮モデル完成しました。
写真で上下に見えている張り出しはカット予定です。
全く何もなかった空間の部分にPP板を重ねることで、なかり大胆に増改築しています。
純正カウルが、いかに華奢だったのも良くわかる写真です。
完全に船形状になりました。
純正の取り付け穴の位置がかなりシビアなので、どうしてもそれを利用する必要がありました。
かなり複雑な形になりましたが、これをゼロから考えて形にするのは、さすがの私でもシンドイ。
上げ底ならぬ15mm下げ底です。
空間を均等に維持する為にも、所々に補強のための垂直のゲタに入れて固定してあります。
底だけをかなり厚めのPP板を二枚張りした硬い物ですので歪みはほとんどないです。
下げ底になっているので、プラスチック溶接部分はやりっぱなしで放置です。
二層の空間があり、まるで立体駐車場の様です。
立体駐車場の入り口は、壁を立てて塞ぎいで補強してあります。
アルミテープやホットボンドでかなり強力に固定されています。
マフラーの遮熱版との繋がりを意識して形状を整えます。
これにてマスターモデル作成はオシマイ。
タンクカバーと一緒で、ここからは捨て型→製品抜き→整形→本型の流れになります。
まだまだ完成までは果てしなく遠い道のりですが、こうして形となって手で触れられるようになると、少しやる気も出てきます。