シートカウルワンオフ

プロジェクトごとに毎回思うのですが、シートカウルはとても制約の多いパーツの一つです。
特に幅が狭いともう流用は絶対不可能。
フレームに当たるところも、一つや二つじゃない事が多いです。
これは、そもそもシートカウルが、オリジナルバイクのフレームに対して、常に「ピッタリフィット」で作られるから。
また、万一エンジンがかからなくなった際に、むんずと持って力いっぱい押しても、ビクともしないようにも作る必要があるので、ただくっ付いているだけではなく、それなりの強度になるよう取り付け方にも工夫を求められます。
それら制約事項を守るとなると、あまり自由な形に出来ないのがシートカウルなのです。

今回ドナーに選んだのはKAWASAKIのZX-12R。
のびやかでプレーンな造形がお気に入りですが、今回はこれをベースとします。
でも、これをこのまま使うのではなく、明確なエッジを立て形状も少し変更し、サイドカウルとの繋がりを演出しようと考えています。

人間で言う所の、包帯ぐるぐる巻き状態。様々な加工跡が痛々しいシートですが、青い部分がHayabusaであり、赤い部分が12Rです。
純正のシートは整備性や脱着を考慮して、真ん中にブリッジがあって外れます。
ブリッジが外れると多少左右にカウルが開くようになるのですが、強度はガクンと落ちます。
FRPは殆ど曲がらないことを考えれば、ブリッジ構造は辞め、結合することで強くした方が得策です。
シートカウルは股下、荷掛けフック、後端の3点、合計6つのネジでガッチリと固定されますが、そのどの穴も寸分たがわず正確に空いていないといけないので、位置合わせには大変苦労しますし、そもそも深底の穴って造形的に再現性が低くて、一つ作るのがとても大変です。

シートカウルカスタムはネタの宝庫で、書いたらキリがないほどの事件が発生しますが、いつも長くなってしまうので、今回は割愛します。
どうしても知りたい人は、過去記事がごまんとあるのでそちらを参考にしてください。
どのプロジェクトも、シートカウル加工のパートになると停滞し、かなりの時間と労力を費やしているのがお分かりになると思います。
様々な制約を考え、乗り越え、工夫してシートカウルのスワッピングは完了します。
バランス調整

何気に新品タイヤを投入しました。ん~新しいタイヤは気持ちいい。
いや・・・・そうじゃなくてシートの話です。埋めて壁も立てました。なぜか?
最近車検制度が変わってしまい、埋め込み型のテールがNGになった様なのです。
簡単に言うとテールは飛び出してて、左右からも少し見える状態じゃないとダメってこと。
多分”裏ペタ”を締め出すための変更のような気がします。
そんな事情もあり、埋め立て&壁立てなのですが、今回はカフェレーサースタイルですので、ここは一般的なルーカス形状にでもしておきましょう。
あんまりGSXーR風にしてもコンセプトがブレますし、そもそも近年のSUZUKI車は共通部品化しているので、あまりブサらしさもテールから感じません。
それならせめてカフェレーサーの伝統に従うのが良しです。

純正シートを分解したら、シートロックワイヤーが極端に短かったHayabusaは、キーシリンダーの移設自由度がかなり限られてしまう(と言うか移動不可能)ので、ワイヤー交換へと踏み切りました。
同じSUZUKI車のストマジ(ストリートマジック)用のワイヤーをオークションで安価で手に入れ、交換することで問題は解決です。
両方が円柱のタイコではなく、片方が円柱で、片方が球状なのはSUZUKI用だからみたいです。

シートロックのキーシリンダーは、左の後端に移設しました。
どんなにカスタムしても、純正品の機能を損なわないのがStudioQのコンセプトです。
この辺は例外なく妥協しません。

薄いシングルシートカバーは、若干削ってから壁を立てて蓋をします。
ZX12Rの様にシート厚のない(写真はコルビンシート)Hayabusaはここが隠れない為、なんだか断崖絶壁に見えます。
カッコいいシートストッパーを付けたくなりますが、現在捜索中です(笑)。
この時点で、シングルシートカバーのサイズは、シート本体の加工具合に合わせて一回り小さく削り、位置固定用の小さな穴などもあけてあります。

真横から見た写真です。
シングルシートカバーはリバースエッジになっており、デザイン的にちょっと攻めている形であることが良く分かります。
このラインはとても面白いので、是非残したいと考えています。
それと、水平に入っているシルバーの一本線にご注目。
これは、サイドカウルのカットラインから、レーザー墨出し器で取った、真っすぐに延長された延長ラインになっています。
12Rのオリジナルのシートカウルは、私が思っていたよりも丸く出来ており、実物にはハッキリしたエッジが表れないので、あえてこの線に沿ってパテ盛りし、人工的な折り返しのラインを作ってやります。
こうすることで、再度カウルとのデザイン上の繋がりが発生し、真横からの見姿のクオリティが、劇的に向上します。

ガソリンタンクのチンカバー(白く見えるもの)も、徐々に試作が進んできました。
純正のタンクラインとは全く違うシルエットは、シングルシートに大変よく似合います。
この辺はCG通りに作って正解だと感じています。
ニコイチで作った階段状になったシートカウルは、まるで現代版ガンファイターシートの様です。
ガンファイターが元々パフォーマンス重視のクラブスタイルだったことも考えれば、この車両には似合いなのかもしれません。
私は怖くてウィリーなんて出来ませんけどね(笑)。

