10Rにはハーフカウルなんて無いけど、アンダーカウルなんて自分で作れるの?
一から作らず、レースカウルを加工して作れば簡単だよ。
いや・・・それ簡単じゃないと思うんだけど・・・
強度を確保する
10Rはレーサーだし、都合よくカッコイイアンダーカウルだけなんて売ってませんので、ここは自作魂で作るしかないのですが、さすがに一からになるとしんどいので、ドナーを用意します。
レース用のフルカウルを買ってきて、適当にカットしてしまいます。
アンダーは船型が基本ですが、フルカウルを基本にしているので大分カーブ(たわんでいる)しています。
これが非常に厄介で、カーブしているものを水平基調で「横から見て、見た目真っ直ぐ」に切り取るのは難易度S級の作業です。
これは塗装にも言えることですが、3Dの物に2Dの様に真っ直ぐに線を引くは、超難しいです。
もしかしたら、段ボールで直線的な船型を作ってしまう方が楽に感じる人も居るかもしれません。
カウルと言うものは、基本的に「折り返し」を付けることで剛性が上がり、しなったり歪んだりしなくなり「カチ」っとしてきます。
何度もやり直して「見た目水平」のラインを何とか探り出しカット出来たら、今回も基本に倣い折り返しを作ってゆきましょう。
カウルの折り返しは余分な部分もあえて作っておきます。
強度ある折り返しさえ作っておけば、あとは自由にカットできるからです。
養生テープを張り込んだ強化した段ボールで、しっかりと型を作っておきましょう。
そうしないと硬化時の収縮に耐え切れず、歪んだ折り返しが出来てしまいます。
カウル全体のボテっとしたふくらみが気になったので、要所要所で縛り上げ、ボルト固定部分のクリアランスが変わらない程度に締め上げます。
この状態で折り返しを作ってしまえば、ガッチリ形状を固定することが出来、引き締まります。
いつもの様に深夜、室内の一角で行います(←懲りない)。
低収縮タイプ(ここ大事)のインパラフィン樹脂と硬化剤を適量混ぜ、あらかじめ部材として短冊状に切っておいたFRPをスピーディに、且つリズムカルに張り込んでゆきます
ビチャビチャ状態でいいんですが、硬化が始まるまでは柔らかくベトベトするので、弄れば弄る程にドツボにはまる傾向があります。
フヤフヤしているので、弄りたくなりますが、少し硬くなってくるまでぐっとこらえます。
硬化収縮が始まったようで、触った際に手ごたえが変わってきました。
どうしても気になる浪打ちのみ弄ったら、あとは吊るすなどして乾燥の為に一回固定しましょう。
そこで最後に形を整えたら、あとは待つのみです。
さて硬化したので加工を始めます。
FRPの削りカスは、尖ったガラス繊維の粉なので、皮膚に刺さったり、吸引すると健康を害します。
どう防御しても体中がかゆくなるので、毎度気の重い作業です。
因みに作業に使った衣服も3回は選洗濯してください。
一緒に普通の衣類も選択すると、まんべんなくガラス繊維を含んでしまうので、家族からのクレームは必至です。
出来るならそれ専用の洗濯機を買うのが理想です(コレ、大袈裟じゃないよ!)。
均一に折り返しの幅を決め、大まかにカットするところをマジックで書いてゆきます。
ハンドソーでは辛いので、ここはベルトサンダーを使えばあっという間です。
段ボールアートじゃありませんが、工夫して型紙を作ってゆきます。
イッパツでは段ボールで作れないので、紙を使って型を作り、段ボールで厚みを引き算しながら作ってゆきます。
マフラーのレイアウトの件もあるので、思ったよりカットしなくてはいけません。
カットすればするほど剛性は落ちますので、折り返しを作るか、いっそ膨らんだ状態で造形し繋がてしまうのも手ですが、まずはカットします。
マフラーが干渉しない程度に少し大きめに作っておきます。
チタンマフラーから発せられる熱量は凄まじいものです・・・燃えちゃいます。
折り返しを付けてもぶつからぬ様、すこし余計にマフラーを避けます。
折り目のあった元々のカウル形状も復元してあげます。
形状に拘る
そして最後の仕事、このダサイ先端の形状をバッサリ落として、カフェレーサーっぽい姿に戻して差し上げましょう。
レース用のフルカウル(クレバーウルフ製)のカットなので、本来であればこれで良いのでしょうが、私は「GPZと言う名の和製カフェレーサー」を作りたいわけで、ちょっとテイストが合いません。
この左右の膨らんだカーブも気に入りません。
クレバーウルフさんには大変申し訳ないのですが、フロントのチン部分をバッサリとカットします。このチン部分をもっとオーソドックスなものにしつつ、全体的に長く見せます。
カットした部分はこのように、元々の形とは逆角度のチリトリの様な形へ変更します。
この方が空力的にもいいような気がしますし、マシンの全体バランスから見ても、正解だと思うんです。
アンダーカウル後部の取付穴は、そのまま使いますが、前方は何も支持する部分がありませんので、任意の位置で折り返しを延長します。
クランクやクラッチケースの底部にあるボルトと位置が近いので、簡易なステーにてアンダーカウルを固定できそうです。
延長っパネ(あえてそう呼ぶw)は、リアタイヤに少し被さるように狙っています。
タイヤとの干渉はしない様に現車で確認済みで、元々のカウル形状を尊重し、尻下がりの直線的なラインで終わるように整えます。
長さを左右で非対称としたのもポイントで、左側はスタンドとも干渉するし、傾いて目立たないので短く。写真写りの多い右側は、左より少しだけ長めにとって理想の長さにしてあります。
ボッテリと膨らむ両サイドを、強粘着のマスキングテープで縛り上げ、カウルサイドを真っ直ぐに矯正しつつ、そのままフロントの「チン部分」を段ボールで作ってしまいます(このままFRPで成形すれば、この形で固定されます)。
チン部分は、80年代を思わせる、オーソドックスな形状としましたが、長く・低く、まっすぐで堂々としていた旧車たちへイメージを近づける為です。
この長めのアンダーの装着によって、旧車のディメンションに視覚的に近づけ、カウルスワップのマッチングを引き上げます。
チン側のエッジ処理と、後方の延長化によって、丸いカウルが四角い舟形に変身しそうです。
そっけない形状が敢えて良いと思っており、今回は狙ってます。
FRPのチクチクを乗り越えて、糸鋸でササっと無駄な部分をカットし、パテで綺麗に仕上げてゆきます。延長っパネもシュっとしてていい感じです。
マフラー避け部分も上手くいきました。丸い筒の様な物を段ボールで作り。
荷造りテープで養生する事で、離型剤要らずです。
FRP切りっぱなしでも男らしくて良いのですが、軟弱な私は触った感じも純正っぽい質感にしたいので、あえてパテを裏からも表からも盛って、少し厚みを持たせ、角をとって仕上げます。
ムンズと持ってもビクともしませんし、手を切る心配もありません。
延長っパネも、ただ延ばせば良いってわけじゃありません。軽く折り返しを作りつつ
、延長される面構成も合わせておきます。
あえて左右非対称とし、それぞれ停車時に最も美しく見える様に、リニューアルです。
横からのシルエットとの繋がりも考え、面を微妙に捩じってつなげます。
とにかく自然な感じに見える様に、細部にも気を配ります。
フロント形状は、旧カウルをバッサリ切り落とし、チリトリ状の傾斜に改めました。
オーソドックスなラインを採用し、折り返しは付けません。
強度が十分に取れるところは、重くならない様無駄に作りこみません。
さあ!出来上がりました。長さのある、直線的なラインをした美しいアンダーカウルの完成です。
塗装に拘る
延長され形状を変えたカスタムアンダーは、まるで長い滑走路を持つ空母の様です。
車両全体を長く見せ、カウルのマッチング率を数段引き上げてくれますが、細部まで作りこんであるので、今回は尚更にマストアイテムです。
マフラーの逃げ部分も、パイプから等間隔のクリアランスをもって造形済みです。
折る返さずに、わざと厚みを模持たせることで剛性を確保しました。
フルチタンマフラーにピタリと合わせた出来栄えは、ワンオフでしか実現不可能です。
サイドスタンドの干渉部分の逃げも作りました。こうした細やかなフィッティングも、ワンオフなら簡単です。
更に空力を考え、アンダーの先端部分は少し「下方向にしゃくれて」いるこだわり様です。
後方の延長形状も当初から見直し、より直線的なラインに手直ししました。
今後刺し色の赤へと、2トーンに塗り分けてゆきます。
サンビームレッドに少々エボニーを混ぜ、彩度を下げた赤を作って塗ります。
真っ赤とグリーンメタリックと黒と白・・・・これだけ聞いても「頭かおかしい人」のコーディネートみたいなので、せめてトーンでコントロールしようという意図です(笑)。
マスキングシートでロゴを切り出しておいて、丁寧にマスキングしてゆきます。
ここで貼り直しは効かないのですべて「一発勝負」です。
シリコンオフで脱脂してから、ニトリル手袋をして、息を止めて行います(笑)。
さらっとマスキングシートを作ってますが、一つ一つ図案起こしから手作りで、大きさも小さいのでかなりの難易度です。
無駄なシートを抜くのも大変ですが、もっと大変なのは、その後リタックに移してから、本体に貼る時です。
微細な抜き代などがリタックにくっ付き、本体に中々転写出来ません。
塗装が終わった後も、乾燥する前にカッターの先などで剥がさないといけないので、神経を使います。
そう考えると、12cm×12cmのこのNGKマークの抜き代は最早狂気の沙汰です。
まだステッカーの方が確実に貼れる分ましですが、ステッカーの段差だけはどうにもなりませんので、ここは気合です。
もっとクレージーなのを作り、左サイド奥にイッパツ放り込んでおきました。
黒と赤のラインにも重なっており、その微かな段差を乗り越えて、詳細な抜き文字が走っています。
こうなると、極薄で細工できる塗装の方が、表現に幅が出てくるという訳です。
サイドスタンドを立てると陰になり、カウルサイドの左はほとんど見られることの無いエリアなので、いつもここには、ちょっとした遊びを入れます。
ホワイトに青を結構混ぜて、昭和の冷蔵庫の様な寒色系の白を作り塗装しました。
吹きすぎると、マスキングシートのエッジに塗料が乗っかって、マスキングを剥がした時にトラブルになったり、段差そのものが大きくなってしまうので、微量な量を遠くから何度も吹き重ねる必要があります。
塗装後は半乾きまで待ち、完全に乾燥する前にすべてマスキングシートを剥します。
丁寧に剥がさないと一発で終わりですが、ここは経験がものをいう作業です。
シートを剥がすまで待つ時間、剥がすときのスピード、対象物に対して引っ張る時の角度など、非常に多くのノウハウ(失敗の歴史とも言う)があります。
いかがですか? 既存のカウルを使いながら、一部形状を変形させることで、自在にオリジナルカウルを作る方法とも言えますよね!
外装カスタムにおいては、ABS樹脂のカウルへのFRP樹脂の食いつきは良いので相性は悪くありません。
あなたもチャレンジしてみませんか?