CBR→RD化 スタート!
2024年11月、ようやく秋らしくなってきた中旬。オーナーさんより「手に入れた!」との連絡があり早速現車確認へ向かいました。
蓋を空ければ、まだ慣らしも終わっていない極上の低走行車です。
ほぼフルノーマルのSP車両は、傷一つなく、息をのむような美しさでした。
約10年前の車両ですが、その希少性や程度から、当時の新車と変わらない値段かそれ以上でしょう。
オーナーの情熱と覚悟に拍手。
過去イチ高額なベース車両が入庫です。
この車両は2015年の1月から、たった2カ月と言う、短期間限定で受注を受け付けた、200台のみ生産の「CBR1000RR SP Champion Special」と言う車両です。
価格は当時の新車で 2,111,400円(消費税込)でしたが、今なら280万前後はすると思われます。
CBR1000RR SPは、STDのCBR1000RRをベースに、より緻密にチューニングを施したエンジンや、ボディの軽量化(シートレールなど)をはじめ、オーリンズ製サスペンション、ブレンボ製フロントブレーキキャリパーの採用などによって、スポーツライディングの楽しみをさらに追求したスーパースポーツモデル。
また、ブレーキシステムには、ホンダがスーパースポーツモデル用に専用開発した電子制御式「コンバインドABS」を標準装備していました。
まだオートバイ用のABSが珍しかった時代なので、誇らしげにステッカーなどが張ってありますが、なんだか懐かしいですね。
実車を見て感じたのは「とにかくコンパクトだ」と言う事。
バイクに詳しくない人が見たら十中八九「これ何CC?」と聞いてきそうです。
そのわりに車幅はソコソコあり、ラジエーターの幅いっぱいまでカウルは膨らんでおり、そこにエアダクトが目立たない様に隠されていました。
エアダクトはフロントのエアアウトレットとは完全に接続されておらず、RAMAIRシステムではないことが分かりましたが、とはいえフレッシュエアーは必要でしょう。
無くても走行に支障はないとは思いますが、撤去しっぱなしでは忍びないので、何某かその代わりになる物は用意せねばなりません。
さて、すべてが想像であり、このHPのタイトルともなる「妄想」な訳ですが、その妄想をもう一度見直しながらイメージを再構することにします。
改めて見ると、フロントカウルが意図的に「縦」に伸ばされており、かなり顔面の大きさが目立っていますが、これはオリジナルの「アンバランスさ」を敢えて表現した物でした。
高速ツアラーとしての防風も兼ねており、ブサカワを狙いに行くコンセプトです。
それに合わせる様に、シートカウルも延長し、前後の辻褄を合わせていました。
未だにこれはこれでアリだと思っていますが、実車輛から受けたインパクトは何にも勝るものです。
まずは、この残り香が消えぬうちに再検討することにしました。
コンセプトの決定
実車を前に、オーナーと打ち合わせるうちに、今回はアフターパーツへの換装は極力抑え、出来るだけオリジナルのSC59を生かす方向で作る事になりました。
まずはじっくりと、この極上限定車両を味わおうという訳です。
きっと乗車する過程で、少しづつ気になったところをバージョンUPするのだと思います。
そうと決まれば、ハンドル位置は純正位置で固定ですので、そこからアッパーカウルの形状を再度考える必要が出てきました。
これは案外と大仕事です。
PhotoShopと格闘する12時間、現車確認から帰ったその足ですぐに取り掛かり、翌日の朝が来て、気が付けば昼になっていました。
ノーマルのミラーやウィンドスクリーンをフルに活用し、SC59のディメンションをトレースすると、スクリーンの立つ角度などもそれに準じたものに変わります。
そうです、高速ツアラーのコンセプトは全て捨て、SS然としたマシンへの回帰しました。
スクリーンは元通りに大きく寝かせられ、スーパースポーツクラスのそれに近づきます。
それに伴い、わざと大きくしていたカウルはスッキリとしたものに、思い切って二回り小さく修正しています。
縦の長さもシュリンクして、本来のコンパクトさを損なわないような形状へと変更です。
大きくあいていたナックル部分も出来るだけ窓を埋め、ウエストラインを上げることで開口部はタイトになって行き、自然とダクトも隠れます。
ハンドルポジション修正への大きな自由度は無くなるものの「ライダーにこう乗って欲しい」と言う開発者側の意図を尊重する形です。
ミラーもウィンカー内蔵の純正品を使うので、アッパーサイドもウィンカーが無く、スッキリするため、NeoCafe感はマシマシです。
フロントのカウルの大きさとバランスする必要があったシートカウルは、その意味を失うため、本来のサイズまで戻します。
テールライト等もそのまま流用する予定です。
大きく見せる必要がなくなったため、不必要だったシャチホコ形状はサイドのみ残して、モダンになるよう修正しました。
当然、純正ワンキーで小物入れの開閉が可能な仕様へ改造します。
今回は仮に車名を CB1000RR と命名しました。
タンクのエンブレムはオーナー意向でイエローウィングではなく、従来のエンブレムを踏襲。
今回は、あくまでSC59であることを主張します。
タンクカバーも市販の物は使わずに、この車両のコンセプトに合ったものを一から作ります。
特徴的なアンダーカウルは、純正カウル形状を延長し、モデファイしたオリジナル品を作成します。
あえてマフラーは純正として、そのマフラーを最大限美しく見せる工夫です。
ブレンボのロゴも新しくなった最近のものを踏襲します。
ほんの少しいたずらもする予定です。
純正のリアキャリパーは加工して、フロントとお揃いにしてあげましょう。
HRCロゴは、ボールドな旧ロゴではなく、イタリックな新ロゴの方を敢えて採用しています。
回顧主義でいつつ、壮大な偽物を作ると言う中途半端なコンセプトは捨て、デザインの再解釈によるNeoCafeに全力を注ぎます。
そのためには、妥協無く随所に新しい要素を盛り込んでゆきます。
又、SP車両には本来付いていない筈のリアフェンダーですが、オーナー希望でSTDの短いリアフェンダーは取り寄せて取付します。
無論、そのままは付けず、カーボンオーバーレイ加工を施します。
ホンダロゴは夕日を思わせるような真っ赤なグラデーションで決めます。
トリコロールはソリッドな色使いで単調になりがちですが、グラデーションをふんだんに盛り込み、カスタムカーらしいリッチな雰囲気にします。
大きな顔のブサカワ高速ツアラーコンセプト。
シートにもそれらしい無駄な衣装を残しつつ、大いにノスタルジーを感じるデザインでした。
小さな車両に抗って、大きく見せる工夫が随所に盛り込まれていました。
オーナーの意向を聞き取りながら、プレーンでSSらしい意匠となったモダンなデザイン。
Studio_Qの十八番、NeoCafeRacerカスタム の面目躍如と言ったところでしょうか。
今すぐHONDAのラインナップに加えて欲しい!そんな純正かの様な違和感のない佇まいです。