近うて遠きもの
前の日の晩に書いたの恋文が、翌朝読み返すとドン引きするくらい狂気地味ていたり。
1日目よりも2日目に温め直したカレーの方がなぜか旨かったりする訳ですが、オリジナルカウル作成においてはどちらかと言うと前者です。
その日は「完璧!オレ天才」と布団に入っても、翌朝歯を磨きながら眺めると「何ですかコレは?」と感じることが、まあナント多いことか。
ここから先は原始的手法「型紙」を用いてのシンメトリー合わせ作業と、細かいディテールUPです。
ゲルコートもファイバーパテも金属のように固いので、手作業では歯が立ちません。
電気ヤスリなどの工具が無い事には、カウル加工なんて全く進みませんので、ここは潔く買いました。
ベルトサンダーは削れ過ぎな点はあるものの、スピードをダイヤルで上手く調節することで、使い勝手がグッと上がります。
ベルトサンダーを駆使できるようになれば、まるでチェーンソー一本で大木から龍を掘り抜くようなことが出来るようになりますが、横の動きに弱くベルトが引っかかって切れがちです。
ベルトは安価なので、いつも大量にストックしてガンガン使います。
紙で型紙を作って当てて見ると、結構違ったりするのでちょっとショックです。
それとは別に形状を変更した場合も、左右を揃える為にこの方法で修正します。
今時はCADと3Dプリンターでやるんでしょうが、きっと私が手を出すことは無いと思います。
※その前にバイク辞めます(笑)
スクリーンエンドのデザインも大きく変更しましたので、パテで面を出してゆきます。
ベージュのタルク、白っぽい部分がファイバーパテ、雑巾のような汚い部分が貼りっぱなしのグラスマット、ABS製の赤いカウル部分には、PP板を張り付けていたホットボンドの糊がまだ付いてます。
これらをいちいち手作業で下地処理していたらそれこそ日が暮れますが、このまま#80を付けたポリッシャー(兼ランダムサンダー)を当てれば、僅か数秒できれいさっぱり面が出ます。
回転スピードを調節すれば、削れ具合を調整できるので、うまく調整しながらサクサク進めます。
パテを素早く乾燥させ、ササっと面を出すことを繰り返してゆきます。
だいたいこれを3回繰り返すと、ほぼ面が出てきます。
スクリーンエンドにつながるナックル部分の造形もちょっと付け足して小変更です。
ナックルデザインの小変更の効果は、横から見た時に初めて分かります。
こうすることで、カウルの表情に厚みが出る一方で強度が上がり、更に横から見た時の一直線なラインにボリュームを与えてくれます。
こういった一連の変更の”引き出し”は経験あればこそです。
遠くて近きもの
文明の利器をフル活用し、サっと面出しが終わったものの、ステージが完成に近づくことで問題が表面化する事もあります。
継ぎ接ぎだらけのブラックジャックの様なカウルを見ながら「よくこんなことしたよな・・」と眺めていると「色々アカン」のが分かります。
まず、肝心のオデコのラインが揃っていません。
こっちはいいんですが、OKなのはあくまでこっちだけ。
元のカウルのベースラインは青で、正面が盛り上がっている物でしたが、緑の様な真っ直ぐなラインに修正したいと思っていました。
しかし、正面から見て左側はOKでも、右側にまだ難ありです。
元々のラインが右側だけちょっと残っていた様です。
黒いゲルコートの丘部分をベルトサンダーでサッと飛ばして調整します。
抑揚のあるサイドのシルエットにも少しガタ付きを感じました。
接合部分だから仕方なしですが、妥協はいけません。
エグリや逆リバースがあるとはいえ。少しガタつくので、緑のラインへ変更します。
ベルトサンダーでやれば、僅か1~2秒の作業ですが、慣れてない人には無理かもです。
削り過ぎたら即OUTなので、スピードメモリを1まで落として慎重に。
アッパーサイドの折り返しにもうねりを発見。
うーむ、これはいけません。
山なりにうねる青いラインを、緑のような真っ直ぐなラインに修正します。
ベルトサンダーは高速で動き、切削能力が強いので、少しづつ削ってピタリと収めるのが大の苦手。
大きくて硬そうな所を大まかにベルサン>>>細かい面出しはポリッシャー改オービタルサンダー>>+#80>#400>手で水砥ぎが正解です。
わざわざ作ったサイドのキャラクターラインは、狙い通りですが、これは逆に真っ直ぐにならぬように、緑のラインに寄せてゆきます。
アッパーサイドも少し矯正して、後方へ開かない様に修正済みです。
カウルエンドは純正風に綺麗に収めますが、シンメトリが大事。
うっかりすると、こんな風に削りすぎてしまいます。
ヤレヤレ、また元に戻さなきゃいけません。
レイブリックのマルチリフレクターライトを仮に入れてみました。
これでもまだカウルが大きく感じますが、オリジナルだったら一体どうなっていたことやら(笑)。
何度も悩みましたが、オデコのラインも、少し大きすぎなので、ストレートに修正です。
開き気味な青いラインを辞め、緑のライン(ゼッケン風)に修正します。
しかし、一度大量に盛ったファイバーパテの塊を、また元に戻すのは重労働です。
屋外で長時間、ベルトサンダーが唸りを上げ、あたり一面は雪のように白くなります。
顔も目も頭も服もみんな白くなり、隙間という隙間、穴と言う穴すべてに入り込みダメになります。
ツナギに着替えてますが、控えめに言っても地獄です。
ナックルは、一旦分かりやすいように、上下から削って面を出します。
余り尖らせてしまうと、旧車は旧車でも、SUZUKIのGSX-Rになってしまいます。
実際にはここまで尖らせませんので、最後に丸めてしまいます。
まだ荒さは残っていますが、潰したい目を潰し、作りたいラインを作って行きます。
カウルの面構成は、終始一貫した1センスで纏めないと途端に品質が落ち、誰かを感動させる様なものを作る事は出来ません。
なので私は、誰にも意見を求めず、誰の話も聞きません。
黙々と自分と何日も向き合うことで答えを突き詰め、一瞬の閃きと共に一気に仕上げます。
時間は掛かりますが、品質は担保される、この非効率な方法にStudio_Qは拘っています。