GSX-R1000でカタナを作りたい⑥

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急がば回れって転べばいい

水平基調への回帰①

80年~90年代初頭までのレーサースタイルは、キャブ車の為ガソリンタンクは水平にスパッとまっすぐで、乗車時にはそれらのラインがシートのラインとピタリと合っており、一直線な美しいラインが見れたものです。

The水平基調ですね


最新型のバイクへのネオクラシックのカウルスワップには、この水平基調なラインが非常に重要であることは言うまでもありません。
これを車高調整だけに頼って実現しようとすると、極端な車高ダウンが必要になり、乗り心地も損なわれるだけではなく、マフラーの角度まで一緒に下がってしまうので、まるで「腰が抜けたネコ」みたいになります(笑)。
今回は、若干の車高調整(-1.5cm)と、タンクとシートの両方のトップラインを直しながら、混然一体となった美しさを計算で演出しようと思います。

ガレージ内のゴミは時々宝になります

適当に転がってたタンクカバーを切り刻む事で、ちょっとヒント探しています。
トップラインは元のラインを無視して水平に保つことで、より高い位置をキープ。
それに伴ってすべての面構成がずれてゆくのがお判りでしょうか。
シートエグリもかなり上に固定しているので、もう全く違うものになっています。
当初思っていたように、ちょっと切ったり貼ったりするだけでは、完成するようなものではありませんでした。

さあ不要な部分をカットして、理想に近づいてきましたよ。
上と下の面は残して、サイドは猛烈に合わなくなってきたのでPP板で型取りして新たに作ってしまいましょ。

PP板はカッターで細かく切れ目を入れると上手く曲がってくれます(力任せではダメです)。
それでもPP板では表現できない微妙な部分は、アルミテープを使って目留めしたうえでタルクで土台を作り、そこへFRPを重ねて貼ってゆくことで成形可能です。
この後全身真っ白になりながら、頑張ってベルトサンダーで余分な物を削ればいいのです。
こうして複雑なラインを持つ、世界で一つの「GSX-Rカタナ化タンクカバー」のマスター型(ほぼ100%需要はないけね)が誕生しました。

これが私の考える理想のロングタンク化であり、カタナになる為へのマスターピースでした。
この「塊」をFRPで作ってしまったら、もうこっちのもんです!
細かいディテールは、パテで仕上げてマスター型とします。
それを元に、出来るだけ薄くて軽いタンクカバーを作ります。

水平基調への回帰②

ピリオンシートカバーは、純正だとペッタンコなので、ボリュームがほとんどありません。
ストリートユースとしては「しゅっと」しててカッコイイのですが、今回はネオクラのカスタム車両ですからそのままって訳にはいきません。
少し落ちた車高、変更されたタンクラインに合わせ込み、シートトップもピタリと高さを合わせ、一本の水平基調のラインを紡ぎ出す必要があるのです。
今回は使い勝手も考えて、シートカバーをイチから作らずに、既存のシングルシートカバーを「盛り上げる」型を作ってみます。
こうすることで、シートキャッチ機構はそのままに、便利なまま表現自由度の高いカスタムが可能になります。

PP板を使った簡易型にゲルコートを流し込み、乾燥させたのちに1プライで軽く仕上げます。
形状は出来るだけ純正品を参考に違和感のない物にしました。
PP板にカッターで切れ込みを入れて作る角のあるプレスライン。
カッターを入れずに手で折り曲げただけの優しい角丸なライン。
これ以外にも、様々なテクニックを使い分けてPP板モデリングしています。
簡易の型とは言え、硬化時に歪んでしまったら出来上がった後に盛大にパテを盛らなきゃいけなくなりますので、収縮が少ない樹脂を選び、最小限の使用にとどめます。

簡易の型は壊して捨ててしまいます。
ここまで出来たら、今度は車高やタンクのラインに合わせて高さと角度を調整します。
肝心要の作業なので、一切の妥協は許されない部分です。
完璧な角度と長さや位置が決まるまで何度も削ったりして直します。

修正に次ぐ修正の果てに完成したら、今度は既存のシングルシートカバーへタルクで接着した後で、FRPを部分的に貼って完全に一体化します。
一体化した後に削り込んで無駄を省き、今度はパテで丁寧に仕上げて完成します。

どうでしたか?
小さな拘りをたくさん散りばめてあること。
それらが混然一体となる様に、すべて先に計算されていたこと。
妥協する道は次々と現れるけれど、それらに迷うことなく正しい選択をすること。
言語化出来ない「もやもや」は大切にして向き合うこと。
創造したデザインを現実にするには、このようなな過程を経てたどり着くことができるのです。

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