大胆に繊細に
実は、このスクリーンスタンドには試行錯誤しています。
それは、形じゃなくて「角度」の事。
写真は数年前に作ったGSX-R750KATANAですが、この際はマジカルレーシングのスクリーンスタンドを使っています。
40mmロングのスクリーンもマジカル製ですが、下に少しずれる感じで取り付けられ、ヘッドライトカバーに少し被り気味になって居るのが気に入りました。
しかし!肝心のスクリーン取り付け角度が結構寝ており、正直言って不満でした。
さて、今回のGSX-R1000KATANAは、ただのお気楽カウルスワップではありません
ハンス・ムート氏の思想をしっかりと理解した上で受け継ぐには、フロントカウルとガソリンタンクは二つで一つの塊になっていなくてはいけません。
つまり、全く違うガソリンタンクとカウルの間に「見えない橋」を掛ける必要があるのです。
それはペイントデザインでもあり、カウル形状でもあるのですが、最大のポイントはカウルの取り付け角度だったりします。
理想は弱い前傾位置に取り付けられており、前方を睨み付けるような設置がいいのですが、それにはライトのクリアランスや、スクリーンの角度が大きく影響を受けます。
故に、それを決めるなら、本来は”カウルの固定”が先でした。
そしてそのことに気が付かず、ミスを犯しまくります。この写真、一見よさそうですが実は失敗例で「何となくこの辺かな~」と根拠もなく作業してしまっています。
後にこれに気が付いて、カウル作成を最初から全部やり直す羽目になりました。
さて、顔面整形を受けて臨んだ二回目です。
まだ大事なことをに気が付いてません。
更に、今度はスクリーンの位置が奥に行ってしまっており、変になっています。
これもまた・・・・後にならないと気が付かないのでした。
さてさて、そろそろ自分にも愛想が尽きてきた3回目。
ようやく再現性の無さの原因が”カウル固定位置”だと分かりました。
こうすると、スクリーンの位置も、角度も、すべて連続的に決まります。
夢中になっているときと言うは、周りが見えていないときでもあります。
良いアイデアが浮かぶこともありますが、それは大抵作業をしていない時の事が多いです。
皮肉ですね。
さあ、もろもろ決まったところで、冒頭の写真に戻りましょう。
”カーボンオーバーレイ施工”は、対象物にカーボンクロスを貼り、その上から超硬度の樹脂の膜を作る為、削って完成するまでには地獄とも言える工程を踏みますが、電動工具があれば話は別です。
ここではハンディタイプのランダムサンダーに#100程度を付けてババーっと削ってしまいます。
有害な粉末が大量に周囲へ飛散するので、ガレージ内が大惨事になりますが、あらかじめ集塵装置などを自作してからやることをお勧めします。
粗々で削ったものを今度は水砥ぎで丁寧に削ります。サンディングブロックに#400程度で慎重にやると、最終的にこのような美しい状態になります。
この後は、ウレタンクリアを吹くと、綺麗なリアルカーボンの目が出てきて完成となります。
型を作ってから、実際にウェットカーボンで作ってもいいでしょうし、FRPである程度作ってから、このように被せてもOKです。
カーボンパーツの自作に正解はありません。
地味な作業
オリジナルパーツをいくら作っても、それは一体どうやって車両に取り付けられるんでしょうか?
そしてそれらを、あからさまに取り付けない方法とはどんなものがあるのか?
まあ、ここに書いても誰も参考にしないだろうし、そもそも共感されることは無いでしょうから、さらっと結論だけ書きます。
まず、素材は圧倒的に軽いアルミに限りますが、田舎のホームセンターで売ってるものではダメ。
強度と加工のしやすさの境界線はズバリ「3mm厚」です。
まずは2mmでも無く5mmでも無く3mmのアルミ板を用意します。
手では絶対曲がることが無く、アルミならではの粘り気がありますので、あっさりと破断することもありません。
ハンドソーでは切り出すことが難しいので、ここは電動ソーを用意しましょう。
型紙などを作っておき、間違いのない形で切り出したアルミ板を、ベンダーマシンを使って正確に折り曲げてゆきます。
上手く折り曲げたら、穴などをあけて取り付られるようにします。
出来るだけ取り付けボルトを見せたくない場合は、ブラインドリベット等を活用したり、タッピングダイスにて直接パーツ側にねじ溝を切ることもあります。
どちらも高付加には耐えられませんが、カウルの固定にはもってこいです。
このような作業を経て、細々としたパーツのディテールが決定し、それらの取り付け金具が完成することで、デザインの最終形が見えてきました。
ここからは、それぞれのパーツを取り外して、FRP型の作成による量産化への布石を打ちます。
その後は、各パーツの形状の最終仕上げや塗装作業へと移ってゆきます。
ペイント作業はある種”アーティスティック”な作業なので、閃きがあればアドリブも走ります。
どうぞお楽しみに★