キャリブレーション
出口まであと一歩な感じです。
レーシーなコックピットを脱する為、シートのスペースをもう少し開けます。
一直線なレーサーライクな雰囲気を少し和らげましょう。
具体的にはシートをタックロール一本分後ろにずらして、寝かせるとよさそうです。
折角作った試作品ですが、まだ修正が必要になるみたいです。
少しだけサイドパネルを延長して追加します。
ついでに後ろ方向にも少し長くしてバランスを取ります。
様々に見えるプレスラインとの整合が取れてきました。
尖ったエッジと、大きく大胆に弧を描くRがこのマシンの特徴です。
かまいたちの様に切り取られた大きなRが無数に交錯し合い、オートバイを360度ぐるりと眺めると、角度や目線の高さで様々な表情を見せてくれます。
今までにない、とても美しいオートバイになりそうです。
モデリング
何度も壊しては作って来ましたが、ついにその旅も終わりを迎えると思うと感慨もひとしおです。
ポストに入っていたヨシケイのチラシで型紙を取ってゆきます。
深夜だというのに・・・・どれもみな旨そうです。
なんだかお腹が減ってきました。
シートの一番大きな部分は、実は真っ直ぐでは無く、微妙に内側に巻いています。
それらを再現するには、伸びない紙を当てがっても正確な型紙が取れません。
所々にハサミを入れて動くようにしてから、少しづつ形を作ってゆきます。
サイドパネルも紆余曲折の末に、随分と様変わりしました。
シートレールを隠す為に下方向に伸び、当初の2倍は大きく、横にも長くなりました。
拘っていた逆Rも、筋を入れることで曲げるなど何度か挑戦してゆくうちに、全部に筋を入れない方が良い事も分かってきました。
こんなノウハウが世の為人の為になるとは思いませんが、一応記しておきます。
試作には加工のしやすさもあって1mmのペラッペラを使ってましたが、モデリングには極厚の1.4mmを使います(中々売ってる店舗がありませんが)。
厚いだけあってサイズも小さくなるところは仕方ない所です。
100円で提供してくださるダイソーさんにはただただ感謝しかありません。
しかしこの1.4mm、普通のハサミだと切ってゆくうちに滑り始め、どうしてもうまく切れません。
私の場合、こんな風に掴んで離さないギザギザのハサミを使い綺麗に切れてます。
意外と探しても無いので、在庫してます。
一つあると本当に便利です。
はい、この通りです。
サイドパネルが超絶綺麗に切り抜けました。
手ごわい1.4mm厚のPP板とは思えない美しさです。
ひたすら型紙を映し取り、それを元にPP板に転写してから角パーツを切り抜いてゆきます。
因みに型紙を作るポイントは、現物からそのまま写し取らない事。
必ず中心点を正確に測ってマーキングして、左右どちらかの出来の良い方を半分だけ作ります。
その後反転させて残り半分も作り合体させると、完全にシンメトリな物が出来ます。
そうすると案外実物が歪んでいることが分かったり、それが修正できてしまいます。
時々現物がシンメトリでもズレますが、その場合はどこかにハサミを入れると治ったりします。
全てが平面で構成されている訳ではないのです。
捩じらずに均一に曲げたい場合は並行に筋を入れます。
OLFAのPカッターS型を使って筋を入れておきます。
筋を入れれば、このように自在に曲げることが出来ます。
PP板は気温が低い時には、手で曲げようとすると「パキン」と割れることがありますので、筋を入れた方が完璧に曲げられます。
筋の入れ方でも結構調整できるのですが、間隔を狭くすればするほど弱くなって綺麗に曲がります。
これは均一に曲げたかったので、間隔を詰めたり開いたりせずに真っ直ぐに平行に筋を入れています。
どっち側から筋を入れるかもとても大事です。
裏側に筋を入れて曲げると、綺麗なモデルが出来ます。
予め展開図を完全に頭に入れておかないと間違ってしまうので、パーツには目印をつけておきます。
筋を強く一回入れるか?弱く2回ぐらいにするか?色々と試すと曲がりやすさを調整できます。
こればかりは場数を踏むしかありません。
上級工作員(笑)になると、こんなこともします。
手前の部分は車輛に取り付けられる部分なので、曲がって欲しくありません。
折角の分厚い1.4mmの強度を維持する為にそこには手を付けず、曲がって欲しい所をピンポイントでカーブを描きながら彫り込みます。
ほらピッタリ。
無駄な筋を入れたり、間違った方向へ筋彫りすると上手く曲がってくれません。
逆にここまでピンポイントで無駄なく掘ると、何の修正もせず一発でピタリと合います。
まあ・・・・こんなスキル誰にも自慢できませんけどw。
マスタリング
さて、そんな誰にも自慢できない技を繰り出して作ったのがこちら。
この黒い部分、実は左右のパーツが別々で且つ右と左が同じじゃないんですが、一切重ならずに隙間なくツライチでピタっ!!!っとハマってます。
まるで一枚物のシートで作られたかのようにチリが合っていて気持ちがいいったら無い。
丸く歪みながらも凹凸なく精密にPP板が接合されていると言いう事は、いかに型紙が正確であったか?と言う証明でもあり、PP板の切り抜き精度も高いです。
人間10年も訓練すれば、ダイソーの100円のPP板でもここまでの物が作れてしまいます。
ま・・・・それでも結局10日ぐらい掛ったけどね(笑)。
接合部分の中心は一番弱くなるので、裏に細い芯を一本入れてやります。
見て分かるように、1.4mm厚のPP板が一切歪むことなく、とても美しく出来ています。
型としての役目を終えたら、これを壊すのが・・・・ちょっと悲しいです。
黄色いサイドパネルが極々僅かに内側へと傾くので、同じ幅のパネルで橋渡しを行った後、筋交いを入れて更に固定します。
こうやって空間を一つづつ埋めることで、FRPの型としてガッチリしてきます。
ブリッジ部分に補強を入れて強化。
更にトンネル部分に蒲鉾上の補強も入れます。
全部、裏からも表からもホットボンドで補強です。
はあ・・・・これ壊したくない(笑)。マジでここまで来るの大変だった。
レビュー
さあ、おまちかね。答え合わせのお時間がやって参りました。
パッと見た感じ、中々いい感じに仕上がっているように見えます。気のせいか?。
うーん・・・まだちょっと尖りすぎですね。
まあPP板のモデルだから仕方無いのですが、実際にFRPで作る時は角という角を全部丸めます。
丸めないのは、黄色と黒の境界線だけです。
サイドパネルの逆反り面は、少しずつひねりを加えながら伸びて行く複雑な面構成です。
これらが左右共に正確に再現できたことには非常に満足しています。
再現性が高いと言う事は、それだけ技術体系が整理されていると言う事。
ピンクの面はもう少し角度が寝ていた方が、優しい感じに見えて車両にも合うかな。
一度カウルが完成してから、再び手を加える事にします。
ここまでで分かったことは、概ねこれで型起こしを進めて良い、一定のクオリティに達したこと。
ただ、まだお尻が少し尖がり過ぎで変なことや、レーサーみたいに直角なピンクの面をもっと寝かせたいこと、黒い部分の輪郭を少し修正し、微かに弧を描くようにすると更に車両にフィットしそうだって事です。
唯一弄らなくても良いのは、散々直した黄色い部分のみです。
これはPhotoShop上で上記の修正を加えた完成図です。
最終的に、この姿を目指すことに決めました。
特徴的なフロントフェンダーも少し前に延長し、地面に対して直角に立てたいと思います。
そうすることで、このオートバイが「一本の矢」の様に凛とした佇まいを出してきます。
30年前のMONSTER用リアフェンダーも加工され、全く違和感なくフィットしています。
まずは最低目標「10人中8人は認めるカッコよさ」はこれでクリアです(笑)。
さ~て、ここまでは当たり前。
ここからが仕事です。