ソリッドな面構成
面を出しまくって、これでパテは3度目。
もういい加減ガレージ内が真っ白になるのは懲りたので、粉末飛散防止用にカーテンを買いました。
塗装ブースのテーブルの上で作業することが多いので、ブースを囲むようにカーブレールで透明なビニールカーテンを引いての作業です。
出来上がりつつあるアッパーカウルは、この角度からだと、大きくうねりながらも、ソリッドな面構成が見てとれます。
ナックルのエグリが一部、面構成を無視して縦断していますが、これは考えに考えた末の答えです。
サイドは一見切りっぱなしの様にまっすぐに見えますが、なかなかどうして「うねって」ます。
サイドが一旦「絞ってある」と言った方が適切かもしれません。
ふくよかな顔面からは想像もできない程絞ってから、外に張り出します。
仕上げにかなり手間のかかる造形ですが、最後は全部手作業で面を出します。
ボディとのバランスを見る為に仮止めしてみます。
狙い通りの位置に来ました。
今回のNinjaは、長く・低く見せるのはどうすべきか相当悩みましたが、様々なトライの末にこの位置、この形が決まって行きました。
デザインのフィロソフィー
カッコよければあとはどうでも良いんですが、一応作ったからには解説します。
スタンドが掛けてあるとはいえ、弓なりの尻下がりなデザインに「ちょっと驚いた」人も多かったのではないでしょうか。
トレンドから言うと逆行していますが、レスドモッドなので逆行していて正解です(笑)。
古くは、90年代初頭のRSやTZレーサーのシートデザインを参考に、クラシックなサンデーレーサーの風な佇まいを演出しています。
特筆すべきは、この車両デザインはライダーを取り込んで完成する事です。
ライダーが跨って初めて様になる最大の理由は、ライダーの背中越しに残された空間です。
これがシュッと絞ったシートエンドと相まって、相当にかっこういいものになります。
カウルのサイドラインは紆余曲折ありながらも、フレームに沿った形で纏めました。
カットラインは3種類の候補がありましたが、なんと!全部試した上でこれに決めています。
一部延長されたサイドカウルは、左後方斜め上に切れて行くシートのラインに角度を合わせます。
シートと一体となった直線も見えてくるため、実物以上に車両が長く、堂々として見えます。
コの字型に受ける形でアッパーのラインは構成されています。
後にお見せするアンダーカウルとの協力によって、コの字ラインは完成します。
今回デザイン上の挑戦にもなった「長く」「大きく」ですが、これにはかなりの冒険が必要でした。
通常はアクスルシャフトを超えるカウル設定などありえないのですが、カウルは飛び出し、フェンダーもそれをフォローしないという有様です。
これは逆に、フェンダーが寸足らずであるようなアンバランスを生み出しながらギリギリ(デザイン上)耐え、その分アッパーがグイっと前に出て来ているような視覚効果を狙ったものです。
これはデザイン上かなり危険な挑戦ですが、フェンダーを飛び出させてフォローしてしまうと、車両のイメージが一気に凡庸な物になってしまいます。
そして最大のサプライズは、これだけレーシーな雰囲気を出しているにもかかわらず、ハンドル位置が高く、非常に体に負担が少なく、ゆったりと乗れることです。
ハイウエストにしたアッパーのナックル部分もかなり「上」になっており、更に「切り取り方」を工夫する事で、高いハンドルが動くための自由な空間を確保しています。
ナックルのカットは車両全体が「前傾姿勢」に見える様、わざと前に倒して角度が付いています。
敢えてフロントヘビーなデザインバランスも、カフェレーサー感を一層演出しています。
これぞデザインの勝利です。
シミュレーション
ま、散々書いてきましたが、かっこよけりゃどうでも良いんです。そんなこと。
それではペイントする予定のNew仏壇カラーをCGレンダリングし、完成イメージを高めましょう。
初期段階で書いていたイラストよりも、かなり上出来です。
車両の「アンバランスさ」をよくぞここまで制御したって感じです。
何度も言いますが、このバイクはライダーが乗って様になるバイクです。
私的にはほぼ理想的で、完ぺきな仕上がりに見えます。
まだまだ作業は山済みですが、まずは車両のデザインを不安に思う必要はこれで無くなりました。
さあ、最後のNinjaにふさわしい出来栄えになるよう、細かいテクニックを駆使して進めます。