ディテールUPする
カウルの造作はほぼ終了していますが、このままではガラクタです。
角も曖昧だったり欠けてたり、平らな面どころかすべてがボコボコです。
ここからはゴミ→工芸品レベルまで、一気に品質を上げする作業を行います。
ページは1ページですが、作業はかなり長時間になります。
最初は荒くランダムサンダー#150で面を出しますので、シャカシャカ傷が凄いw。
凸ばかりではなく凹もあるので、簡単にやればいいという訳ではありません。
ぼんやりしていると削りすぎてしまい、凹が広がるだけで、中々狙ったようにはならないのです。
荒い番手でFRPを直接削るので、FRPの鋭いガラス粉末が大量に飛散しますから、体を守りながらの作業になります。
足りない部分には、タルクを使って肉盛りすることもあります。
なぜこの作業に時間を掛けるのかというと・・・・
例えばこのスクリーンエンドの淵に掛かる僅かなカーブです。
「FRP製品なら歪むのが当たり前」的な発想で、スクリーンとカウルが少し離れていても「まあいっか」みたいになってしまいますが、そんな少しの違和感も取りこぼさずに、完全に合わせ込んでピッタリに作るからです。
そのために実際には、この小さな先端の部分のみの「型」を取り、一つ一つ再現しています。
ポリパテではなく、ファイバーパテを作り造形しますが、まあ面倒な事!(笑)。
しかし、この細やかな作業の積み重ねるからこそ「まるで純正品かのようだ」「メーカーも最初からこんな風にすればいいのに」などと言っていただける訳です。
パテで面を出す
細かなディテールの造形をいくつも繰り返し、出来ることが無くなるまでやり続けます。
数週間の作業を経てようやくディテールUPが終わりました。
元々お手本となるカウルがある場合は必要のない作業ですが、このように大きなオリジナルカウルを一からワンオフするとなると、すごい仕事量になってしまいます。
今回は意図的に複雑な形に設定したので、余計にそうなってしまいましたが、これが終わったらようやく通常のパテ成形に進みます
スクリーンブリッジはカウル強度を優先して、やはりカウル側に設定しました。
スクリーンを型に見立てて作ったので、ある程度安定した形状を保っています。
パテ埋めと成形作業で、スムーシングしてゆきます。
広範囲な面出しは人間の手では不可能なので、サンディングブロックや当て木を使って進めます。
特徴的なうねりのあるカウルであることがよくわかる写真です。
今回のNinjaカウルは、純正よりも少しワイドナックル化してSSに合わせてあります。
このナックルは、紙風船の型紙の様に、3方向からつなぎ合わせカーブする面構成となっていますが、それを無視して、一直線にナックルのラインが貫いています。
ハンドルポストの位置ありきのデザインの為そうなりましたが、今回の車両の大きなアクセントです。
カウルは折り返しながらスクリーンエンドに、R/S型10Rの名残である特徴的なミミを持っています。
そのミミにつながる様に、美しく弧を描くようにリブ加工です。
これによってアッパーカウルに複雑な表情が生まれます。
カウル補強の折り返しは、2.5cm~3cmの太過ぎず細すぎずのラインです。
1cmもあればいいでしょ!と思う方もいるかもですが、カウルSwap時にコックピット周辺がスカスカになると、取って付けた感が上がってしまうので、それにつての対策でもあります。
ハンドルを切っても、ケーブルも含めてギリギリでかすめて行く、そんな形状になっています。
折り返しは、サイドパネルののコークボトルラインに並行して進みます。
サイドパネルの終わりは、角を付けずに彫刻刀で掘った様に終わらせます。
有機的なラインを持つこのカウルに、直線的な面はほぼありません。
あたかも、大きな塊から削り出されたような、彫刻の様なオブジェクトを目指します。
直角な折り目に対し、一度丸く角を埋め戻してから、再度彫りを入れると言う複雑な工程を踏んでいます。
サイドパネルも後端に行くほどキツく巻くような、変わったラウンド形状になっています。
飛散しまくる粉末が見せる陰影が、まるで月面の様です(笑)。
カウルの前面は、結構急な角度が付いており、それらはスクリーンやエアダクトと一体となって造形されています。
塊からスパっと削り出したような造形は、カウルにあたる光によって、様々な表情を与えてくれます。
特に、コーナリング中、クリッピングポイントから抜けて行くまでのカメラ写りが最高に映える筈。
ノーマルのGPZ900Rを参考にした額縁にも一工夫です。
実はこれ、ライトハウジングをしっかり隠せるよう、上辺がほんの僅かに延長されています。
睨み付けるような前下がりのカウル位置にすると、どうしても正面を向くライトハウジングとの兼ね合いが問題になるのですが、そこはデザインで修正という訳です。
オーダーメイドならではの贅沢です。
真っ白な雪原をスノーモービルが走って行った跡が・・(笑)。
この後の掃除を考えると・・・・憂鬱です。
カウルエンドを丸く閉じるのは、乗り手の膝にあたるかもしれない部分だから。
バイクはプラモデルじゃないので、体にフィットしなくて乗りずらいのでは困ります。
写真は一旦このぐらいにしておきますが、この後も様々な拘りによって時間を掛けました。
この後は、サフを吹いて様子を見て行きましょう(もう事件は起こらないはず💦)。