ZX-10R J/KをNinja化する㉑

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KAWASAKI
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シートカウルにも拘りを

大物だったアッパーカウル、フロントフェンダーを攻略することが出来て、ちょっと気が抜けてしまっていますが、まあ人間ですからね私も(笑)。
そんなモチベーションを何とか盛り上げつつ、シート作りの作業に入ります。

このバイクの最大のデザインは迷うことなくシートだと言い切れます。
尻下がりのラインは、現在のオートバイデザインの文法からは思い切り外れてます。
このラインに決定するのに、PhotoShopと睨めっこして、半年かかりました。
その間「もう諦めようかな・・・」と何度思った事か。
いっそR/S型の新型テールと差し替えて、誤魔化してしまいたい衝動にも駆られましたが、そうはしませんでした。

・もっと短いカフェレーサーの様な寸詰まりバージョン
・タンクのラインと合わせた真っ直ぐなバージョン
・憧れのGPZ900Rに寄せたサイドカバーを付けたデザイン

など、一体何枚のCGを描いたか分かりません。
その都度頑張って、どれもこれも「ありかな」と言うレベルにまでは一旦仕上げましたが、そもそもこれは、私のカスタム人生における最後のNinjaです。
最後は最後らしく、StudioQデザインの原点である「カフェレーサー」であるべきだと結論付け、この尻下がりで車両が長く見えるデザインに決定しました。
この尻下がりなシートデザインは、80年当時のレーサー車両にみられる、ライダーが乗車した状態で初めて完成する「塊感」からインスピレーションを得ています。
オートバイは単体で眺めても良く、それでいてライダーと合わさる事でスタイルが完成するのが理想です。
この「人馬一体」を、最後のNinjaで表現してみたいと考えました。

テールはシンプルにスクエアなLEDをチョイスします。
FRP造形が出来ると、どんなテールでも作れてしまいますが、ここは敢えてシンプルにする必要があります。
そう、カフェレーサーには、余計な加飾は必要ないのです。
それゆえ、これをダブルにして耐久風になんかしちゃいけません。いけませんよ・・・(←考えた)。

テールはシンプルにしましたが、そのマウントの造形には想いを込めて、凝ったものにしました。
捨て吹きしてある黒い塗料を削り取りながら、#150→#400と面を出して行きます。
一見きれいなカウルですが、やはり凸凹があるので追い込むとマダラ模様になります。
私は、たまたま間違って買ってしまった黒系の塗料があったので捨て吹きに使っていますが、普通はドライガイドコートを使います。
これは面を出す際に、凹凸を眼で見て分かるようにしてくれる粉で、大変便利なものです。

ファイバーパテは硬くてしょうがないので、やむを得ず最初は#150で削りますが、写真の通り傷が深すぎるので、これじゃサフを吹いても傷がモロに見えてしまいます。
加えて#150だと、ポリパテ部分はサクサク削れてしまうので一緒に削るには加減が難しいです。
何とか荒く面を取ったら、#400で優しく全体を慣らしてサフに備えます。

そもそもこのシートカウルは、クレバーウルフ製のレース用シートカウルをベースに加工していますが、そろそろ原型が分からなくなってきています(笑)。
一度表裏の型を作成して、それぞれに貼り込んだら、頃合いを見計らって双方の型を合体させると言う荒業を使い、袋状のカウルを成形しています。
あまりにトリッキーな技なので再現性は低いと考え、一個抜いたら型はすぐに廃棄してしまいました。

面取りしていると、時折「プチっ」とした引っ掛かりがある所を見つけます。
特に折り返しのライン上にあることが多いそれは、先端のとがった物で突くと、パキパキと割れ穴が広がってしまいます。
こうなるとパテを突っ込んで補修する訳ですが、この巣穴はゲルコートの下層でアリの巣のような広がりを見せることが多い為、部分修正してもイタチごっこになります。
それを防ぐため、このように範囲を広げて一度壊してしまい、その後パテを盛って修正するのがベストです。

巣穴は見つけ次第、カッターなどで容赦なく壊されてゆきます(笑)。
黙々とした大変地味な作業ですが、メーカーでもあるまいし金属の金型など作れませんから、素人はこうした細かい作業を繰り返し反復することで、品質を上げます。
深夜に一人、ガレージでラジオをお供に作業を進めます。

ディテールUP

シートカウルの造形が次の段階に進みました。
シートクッションの取り付け部分の逃げは確保しつつ、シート下のアンダートレイ内が丸見えになら無いように、延長のベロを作りました。

シート形状に合わせたベロを作った後、ふと純正部品の余ったパーツの中に、ゴム製のシートエンドがある事に気が付きました。
捨てるのも勿体ないので、それこそ純正風に付けてみようと思い、おもむろに穴を開けてみます。
ワンオフは、時々こうした思い付きがあり、その都度アドリブするのが楽しいです。

純正のシートエンドは、なんとも不思議な留め方。
ネジやボルトは無く、ただゴムのヒゲが伸びており、ひげの途中にお団子があります。
ゴムが伸縮する事を前提とした何ともアンニュイな固定方法ですが、柔軟性が経年変化で失われたり、取り付け時に引っ張りすぎてブチン!と切れたらオシマイですね(笑)。

しかしまあ、純正シートエンドはシート形状に合った凛々しさですので、正式採用します。
取り付けは、一度綺麗に清掃して、シートが完成した最後に取り付けます。
楽しみが一つ増えました。

番手を上げてゴシゴシとひたすら頑張ります。
巣穴を見つけては壊すを繰り返します。

大きい面に対しては、大きいサンディングブロックを使って面で攻めます。
思いがけない部分が高くなっていてマダラになる度に、ワンオフの闇深さを感じます(笑)。

クソ根性で作業を進め、かなりの精度まで漕ぎつけました。
ここまで仕上げると、塗ったときに全然違います。
特に黒の様な濃色だと鏡の様に周囲が綺麗に映り込み、全体が濡れているような艶が出ます。
様々なスポンサーロゴや派手なグラフィックがペイントされることの無い私の車両はとても地味ですが、逆にシンプルな物ほど誤魔化しがきかない為、造形美で魅せるべく気合を入れていると言う訳です。

まるでヒョウ柄の様になりましたが・・・・これは長い戦いの終わりが見えてきた証拠です。
しっかし長かったな。

万感の思いを込め、最後のパテを盛りました。
ペーパーの入りにくい場所や窪んだRなどの部分、逆反りのR部分などはブロックで削っても、削りすぎたり、その逆だったりして上手く行かないので、最後は「手」になります。
そういう所は、ニトリル手袋をして指に直接パテを取り、指先でパテを塗ります。
この趣味を通じて「人間の指に勝る精密道具はない」と日々実感しています。

さあ、後は心静かに硬化を待ちましょう。
仏壇だけに、そろそろ成仏させてやります。

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