負のドミノ
いま私の頭の中は「わからない」がドミノ倒しのように連鎖しています。
ああ、これぞ正に負の連鎖。
焦りが焦りを呼んでしまい、正常に考えられません。
巨大なECU配線図をPhotoShop合成で作り眺めていますが、特に何が分かる訳でもありません。
分からないと言う焦りが、心の中でジワリと広がってゆくだけです。
気が付くと「諦めようかな」と思わずつぶやいていました。
私の常識では、どんなに悪くしても、ECUのピンアサインの中に「Tacho」とか「PULS」などと言う回転数信号を示すものがあるはずで、これまで弄ってきたバイク達には逆に「CAN通信」などと言う単語は一度も出てきませんでした。
これまであった物と・・・・初めて出現した物?
ようやく落ち着いてきた私は、これらは入れ替わった可能性があることを悟りました。
CANって何だ
冷静さを取り戻した私は、CANについて調べました。
CANとは、「Controller Area Network」の略で、ドイツのBosch社が開発したシリアル通信プロトコルで、CAN BUS通信などと呼ばれるものでした。
CANと聞いて自動車を思い浮かべる方も多いかと思いますが、完成したのは1985年、実際に量産車に採用されたのは1990年が最初です。
その後、1994年に国際標準化機構(ISO)により標準規格(ISO11898/ISO11519)になりました。
そして現在では、ほぼすべての自動車に採用されています。
そのほか工場の自動化(FA:ファクトリーオートメーション)など幅広い分野で活用されています。
現在では、工場をはじめ医療現場などでも活用されているCANですが、もともとは自動車内で使用することを前提に開発された技術だそうです。
その背景には自動車の高性能化によって増える電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)への対応が挙げられます。制御内容が複雑になれば入出力も増えてECUは大型化しますし、複数のECU間でデータを共有すれば配線も増加します。
それによって複雑化し、重量や部品点数も増え、製造コストが跳ね上がってしまいます。
その解決策が少ない配線でも高速かつ確実な通信ができる、シリアル通信プロトコルでした。
ZX-10Rには、ECUにもメーター裏のピンサインにも、CAN通信(ロー)と(ハイ)がありましたが、恐らくマニュアルの誤訳で「送り信号」と「戻り信号」と言う意味でしょう。
つまりZX-10Rは、パルス信号をCAN信号に一度変換し、車両の計器類とは全てCANでやり取りをしていると考えるのが妥当です。
つまり、主要なピンアサインをマニュアルで追いかけ続けても、私が見つけたい「パルス」は、いつまでたって見つからないという訳です。
回転数信号の拾い方
CAN信号ををソフトウェアで解析し、そこから純粋なパルス信号のみを取り出すことはちょっと難しそうです(つかそんな事出来ないでしょ)。
巷にある、サブコンピューターの拡張機能や、レーサーで使うデータロガー機能の一部に、回転数を取り出す機能があるのは知られていますが、これはサブコン側がCAN信号をそのまま扱えるようにしてあるだけで、そこからパルス信号だけを取り出している訳でもありません。
なので、今回は一旦「CAN信号」「CAN通信」から離れます。
わざわざ元に戻すことも出来なそうだし、きっとその必要もありません。
何より、その方がバイクの電子化を進めるのに必要だったからそうなったのでしょう(これからも)。
それを邪魔などしようものならば、すぐさまバイクは動かなくなると思います。
私の記憶が確かなら、そもそも「パルス信号」は簡単に拾えるような原始的な信号だった筈。
電流が流れる度に発生する磁界を通る電波を拾い上げるだけという、非常に原始的な物のはずです。
そのため古いバイクならば、プラグコードに銅線を巻き付けるだけというシンプルな方法でもパルス信号は拾うことが出来ます(あまり正確ではないけど)。
昔は、こうしたプラグキャップ一つ一つにイグニッションコイルが付いており、このコイルから出ている端子にラインを割り込ませればパルスは確実に拾えました。
しかし、現代のFI車の場合、イグニッションコイルはプラグキャップと一体となっています。
コネクタは2極カプラの様ですが、旧車と同じ原理は通用しないでしょう。
キャブからインジェクションへ。
電子制御化が進むオートバイ。
この後に控えている二輪の電動化。
私の知らぬ間に、オートバイは急速に「車化」しています。
信号の拾い方
エンジン回転数はECUから取る方法もありますが、10Rは車輛とタコメータとの通信がCAN通信のためECUからは取れません。
そのため、今回はCKP(クランク角センサーとかパルサーと呼ばれる)から取れるかどうかチャレンジします。
ざっくりと考えたところ、接続種類は以下のような物があります。
車種によって適切な接続方法があると思いますが、今回の場合は1と判断しました。
恐らく、ほとんどの車種は、このパルサーからの信号取得が可能な筈です。
パルサーは、クランクシャフトポジションセンサーとか、CKPなどの名前で呼ばれることもありますが仕組みなどは、SSだろうがカブだろうが、インジェクションだろうがキャブだろうがほぼ同じ。
信号を拾う仕組みは、ローターなどに設けられた突起がグルグル回り、その突起がセンサーのギリギリ前を通過する際にパルスを誘電します。
多くの場合、突起の数が1回転あたりのパルス数になる筈です。
マニュアルを見ると、ZX-10Rの場合はクランクシャフトセンサーAと呼ばれているようです。
これは他車種の写真ですが、インジェクション車の場合はこの突起が 9~24個あります。
パルサーの信号は2本で、うち1本はGNDに繋がっていますので、もう一方を+信号と呼びます。
(正確には交流ですので+ -はありません)
+信号の配線色は車両ごとにことなりますので、それぞれの配線図で確認します。
さあ、ここまでは何とか自力で整理出来ました。いざ勝負勝負!
(失敗した場合、追加メーターは中止します)