2010年式GSX-R1000 クラシックカスタム④

スポンサーリンク
SUZUKI
スポンサーリンク

各部の最適化

色々な秩序を持って各パーツを配置しようとすると、こんな風にとんでもない事になります。
このままじゃカウルが下がり過ぎで、光軸が全然取れませんので、公道を走れません。
プラモデルならいいんですが、公道を走るバイクですので誰かに迷惑を掛けちゃいけません。
ましてや乗り手の命に危険が及ぶなんて、あってはならない。

何らかの形で固定しないと、いつまでたってもパーツの正確な固定位置が出ませんので、そこら辺にあった端材を使って、適当なステーを作ります。
位置決めの基本は上からなので、まずはアッパーカウルを固定します。
簡単そうに書いてますが、高さや前後の位置は何度も何度も試しています。
この位置決めに一週間かけるなんてこともザラです。
作って固定。腕組みしながらグルグルと車両の周りをウロウロし、しゃがんだり立ったりしながら、目を凝らし、時には目をつむり、近づいたり離れたり・・・・・。
食事や睡眠を挟んで、何度も何度もこれをやります。
アッパーカウルの固定は一丁目一番地なので、この出発点が間違っていたら、すべてのカウルがその辻褄合わせの為に切り刻まれることになり、最後には歪な物が出来上がります。

今回のオートバイのモデルとなった1986年式GSX-R750Rは、オートバイデザイン史の中でも突出してる存在です。
なぜなら、カウルのナックルガードが「こんなにも高い位置」に設定されているのは、後にも先にもこのバイクのみだからです。
ヘッドライトのほぼ上端の位置にナックルガードの先端部があり、こんなに「上」にナックルをデザインしておいて「カッコイイ」を成立させた奇跡のバイクとも言えます。
KATANAと言いこの年式のGSXと言い、当時のSUZUKIデザインはユニークでした。

今回はそんな奇跡のバランスを、わざわざ崩そうと言う訳ですが、ワイド化されてしまったアッパーカウルはその影響があちこちに出始めています。
後ろにかけてドンドン広がることで、ナックルもこんなに崩れてしまいました。
このナックルだけはオリジナルの雰囲気を残したいので、ミサイルのような尖ったナックルを再現すべく、整形し直します。

ミドルカウルもフレームに合わせて形状を変更します。
アッパーがワイドになっていますが、それをこれ以上助長しないように、車体ギリギリに絞ります。
ぶっちゃけ、純正のGSX-R1000 L0よりもスリムになりますが、車検証上の車幅はミラーやレバーの先端で計測しますので、表記は変わりません。

エアアウトレットや、ラジエーターを避けるためのブリスター部分も車体に合わせて再設計です。
一度プレーンな状態に戻した上で、再度加工を施します。
行ったり来たりの試行錯誤は延々と続きます。

ラジエーターキャップ位置を出し、切り取ったブリスターを固定してみます。
正に切った貼ったとはこのことです。

こんな時はアルミテープ大活躍です。
強度もあり、張り直ししなければ強粘着だし、手でも簡単に切れて廃棄も楽。
昔はグルーガンを使ってましたが、一度これに慣れてしまうと、作業スピードや回復性は最高です。
AMAZONで安くていいのがあるので、もう何十個もリピートしています。
AMAZONさんは私のこと・・・・・・・・・・・・・一体どう思っているんだろうか(笑)。

黙々と作業するとモチベーションが落ちるので、たまに仮合わせします。
実験的にミドルカウルを後ろに流れる様、延長しました。
ナックルガードから下がってくるラインを強制的に「直線」にしたのもオリジナルとは違う点です。

これが良い方向に出るのか?悪い方向に出るのか?一種の賭けでしたが、纏めることは出来そうです。
こういったところは、もう長年の勘でしかありません。

普通に考えれば青いラインで止めておくところを、今回は赤まで引っ張ります。
※これには色んな理由があります。

切ったり張ったりしていると、FRPカウルは歪んでガタガタです。
ネジ位置を測るところまで、こいつには頑張ってもらってから、成仏してもらいましょう。

サイドの厚みを出してしまうと、アッパーからの頭でっかち感がすごくなってしまって、なんだか特撮ヒーロ物みたいなバイクみたいになってしまいます
DIYで他車種カウルをそのまま付けようとして、失敗するパターンです。
私は出来るだけ昭和のレーサー風にしたいので、完全にフィットする様に全て作り直します。

サイドの膨らみを最小限に抑えつつ、際を狙ってカーブさせたミドルカウルを作りたいと思います。

本家1986年式GSX-R750Rの車幅は以外にも細く、それでいて妙に縦に高さのあるバイクです。
しかし今回のベースはGSX-R1000 L0なので、幅がありつつ低く、若干ホイールベースも長めです。
骨格がここまで違うので、オリジナルをそのまま取り付けても格好悪くて仕方ありませんから、全てオリジナル形状にて作ります。
全体を俯瞰で見たときに、長く低い車体に合わせる為に、ミドルカウルの形状を延長するという訳です。

二毛作、三毛作されたドナーカウルは、またしても切った貼ったでベロベロにされます(笑)。
そりゃ歪むって話です。
このように、マスターモデル作りは、妥協無くプロタイピングをひたすら繰り返す地味な作業です。
それを更に「パッと見」でオリジナルに見える様にするのは、本当に繊細な仕事です。

タイトルとURLをコピーしました