ディテールUP
盛大にパテを盛って、一気に成形して行きます。
削り粉のフュームをもろに吸い込むと、2分もせずに吐き気が襲ってきます。
かなり有毒なのは間違いないので、マスクは必至です。
最初から頭の中にあった形が、ついに目の前に現れました。
しかし、これはスタートラインに立っただけ。
本当の仕事はここからです。
シンメトリの厳密な検査を経て、修正も始めます。
シンメトリと言ってもいたってシンプルな物。
ノートの切れ端を当てがって、裏表で誤差を見つけてゆきます。
厳密な目視検査でも、ヘッドの誤差はゼロ。
感覚だけで作って誤差が無いなんて、ちょっと珍しいですね。
形は良くても、3Dで考えると面が出ていません。
触診にてチェックし、指の腹に僅かな凹凸を感じる部分はマークを付けてゆきます。
+は少し、++は中ぐらい凹んでいるので、その部分にパテを置いてゆきます。
そうそう、形状変更と言えば、この無駄なダクトも上半分が埋まってました。
ベルトサンダーを使って、100%開口しました。
いったい誰が何のために?そうしたのかは分かりませんが・・・・変な折り返しもあったので、そいつごと吹っ飛ばします。
この部分から流れてくる空気は、ちょっと今回必要なのです。
カウルエンドも延長し、形を左右で整えます。
パテはROCKポリパテ(中目)がお勧めです。
結構厚盛り出来て切削性も良く、水砥ぎをすればツルツルに仕上がりますので万能です。
エローの混ぜ具合で硬化時間を季節でコントロールできるのもGood!。
削りで仕上げたら、JUSTプラサフでフィニッシュする組み合わせが、品質&コスパがBESTです。
少し濃い目に溶いてガン吹きすれば、パテの削り筋などの目が綺麗に埋まります。
このパテは結構な強度が出るので頼もしい分、切削は中々硬くて骨が折れますが、オービタルサンダーを活用すれば一瞬で面が出ます。
面白いように削れるので、削り過ぎに注意です(笑)。
個人的感覚では、ベタベタ盛ったパテを、まずは平らにする為に荒く削る場合は#150がBEST。
仕上は#400位でフィニッシュし、あとはサフを吹いてから#800で水砥ぎすれば完成です。
サンディングペーパーは木工用の75mm径ならはコストも安く上がりますので、気兼ねなく使えます。
カウル工作の場合は、目詰まり防止用の穴あきタイプは必要ありません。
#150なら目詰まりしないので、1枚で結構削れますが、#400は大量に必要ですので、私はいつも100枚単位で買います。
ナックルと赤いCBRカウルが交錯する部分の処理も左右で合わせます。
3Dにひねりが加わる、難しい感じです。
カットしたことによる、カウル裏の尖ってて危ない部分はちゃんと丸めます。
この辺もちゃんとしないと、純正品の様には見えません。
切りっぱなしはイケマセンし、何ならカウル裏だってちゃんと艶消しブラックで塗装します。
とにかく丁寧に行きます。
どうしても接合部分はヘコミになりやすいので、パテは痩せてないかチェック。
水たまりのようになっていたら、追加で盛ります。
カウルの折り返しもスッキリと、真っ直ぐに矯正されました。
左右が完全にシンメトリとなっており、気持ちよく、質の高さも感じます。
お気付きでしょうか(いや、気が付かないでしょうね)。
このナックルのカーブと、カウルの折り返しの処理に統一性を持たせてあります。
上から手前と置くに重ねてみて見ると、それに気が付きます。
ディズニーの隠れミッキーの様です(笑)。
アチコチにこのようなマッチングを意識した処理を加えることで、ガーンと高品質になります。
ただ適当に切った貼ったしてても、カウルが勝手にオーラを放ったりはしません。
こうした徹底したデザインへの拘りが、唯一無二の存在へと繋がっていきます。
置いてあるだけで雰囲気が出てきましたね。
しっかり面が出ており、それぞれが理由を語っています。
エアダクトからサイドへ回り込むパネルには、上下にハの字のギャップを作る事で、のっぺりしていたこのデザインに抑揚を追加しています。
ボディ全体でコークボトムラインに出来なかった代わりに、こんなところで動きを付けた訳です。
人の感性とは不思議な物で、完璧な物を計算ずくで崩し、再びバランスさせる点に魅力を感じます。
シンメトリで複雑な組み合わせをバランスさせた、唯一無二なデザインです。
元は丸いカウルなはずなのに決して丸くなく、では四角いか?というとそうでもない。
それぞれの特徴が様々に交差することで陰影を刻み、かなり堀の深い顔になりました。
物としての美しい佇まいは、私たちをドキドキさせることがあります。
デザインとは数学であり計算です。
そして、オートバイカウルのデザインとは、空いた空間をデザインする事と同意です。