DRAFT

約7か月かけて、ようやく完成したALLワンオフのカウル達。
予定外のシートカウルの延長や形状変更もあり、最後のスッタモンダで計画が崩れてしまいましたが、実はこれがいい方向に転んでくれて、更によいバランスとなりました。
タンクカバーも作りましたが、今回は無い方が良いと判断したので、思い切って廃止。
これは、何でもかんでも足せば良いわけではない!と言う良い例かもしれません。
そんな偶然にも助けられ、クラシックな水平基調の「長く見えるバイク」へと変身しました。
今回は予定調和的なものでは無かった為、ある意味私の持つ「修正力」や「再現性」をかなり試されることになってしまいました。
過去のプロジェクトの中でも、かなり難しいチャレンジだったと言えます。

毎回プロジェクトに使う完成予想CGは、かなり解像度の高い画像を分解して正確にコラージュしてますが、今になって思えば今回は大失敗です。
オリジナル車両を知らなかった為”カウルのサイズ感”をリアルに想像しきれておらず、前後共に随分自分に都合よく(小さく)描いてしまいました。
それに輪を掛けたのが「幅を把握できていなかった」ことです。
いつも描くサイドショットCGでは、カウルの幅は分からないものの「まあだいたいこんなもんだろ」という先入観で描いていましたが、実物の大きさは、私の予想をはるかに上回るものでした。
仮面ライダーか?はたまた暴走族か??と思えるほどに天高く反りあがり、そして随分と幅広です。
きっと当時のスリムなオートバイには似つかわしく無い程に、横幅があったのではないでしょうか。
当時はそれが堂々としていて誇らしかったのかもしれませんが、今回ベース車両になるCBR1000RR-SPは、1000CCだけあって意外にも幅のあるバイクでしたので、一周回ってピッタリフィットします。
カラーリングに関しては、小ぶりな物を想定して検討されていたので、ここからは全部やり直しです。

完成予想CGのカラーのテクスチャのみ残して、無理やり変形させながら、実車画像に張り付けます。
大まかな感じを掴むために引き伸ばしたりしているので、よく見るとガタガタです。
カウルの陰影など僅かに反映させましたがディテールが粗々、カーブもガタガタです。
それでも予想していた「速そうな白いバイク」には違いなく、ちゃんと狙った雰囲気は出ているので、方向性は絶対間違っていないと言う確信を得ました(強がり)。

失いかけた自信が戻ってきたので、さっそく気を取り直して描き込みます。
PhotoShopを使うこと丸二晩。様々な個所をすべて描き直しました。
PC上で色々試した結果、濃淡のグラデーションを付ける以外は、広い面積をベタっと塗った方が、RD感が出ることが分かったので、小細工は無しです。

まずはシンプルで落ち着いたスキャロップの角度を揃えてゆきます。

僅かに前傾したカウルに合わせ、全体のラインを平行にせず、一点投影法で後方に集約します。
なので平行線ではなく、すべてが僅かに絞られるラインです。
こうすることで、停車時にも疾走感・躍動感が生まれ、走っていても停まっていても絵になるバイクとなります。
私から見れば、HONDAのトリコロールはすべてこの手法でデザインされているので、その法則に乗っ取ります。

ペイントとは関係ないけれど、このFフェンダーカットラインとツライチのアッパーがお気に入り。
今回唯一「ハズシ」の要素を突っ込んだ部分で、ここだけMotoGP風です。
ベースはバリバリのSS!ほんでもってSPだぞ!と言うささやかな主張です。
NeoCafeとは何か

オリジナルはよく見ると、ベタ塗りのスカイブルーにも見える銀ラメ多めのブルーでしたが、それではちょっとファンシーすぎるので、途中でスッと消えて行く濃い青のリボンに変更。
そもそもアッパーサイドはオリジナルと形が全く違い、かなり横に伸びました。
その為、HONDAのロゴはもっと大きくも長くも出来ますが、そうすると大きすぎて変です。
ロゴは後退させつつ、ホドホドな大きさに纏めて、下から上へのグラデーションを入れます。
立体感を強調する為にナックルにハイライトを入れてますが、実際にはこんな風には光りません。
サイドの赤はボルドーから黒へと変化するシンプルなベタ塗りのグラデーションで、カウルの折り返しを使って色を変えたりせず、地続きにします。
ここら辺でラインなどの遊びを入れるとBusyです。
これは盆栽ではなく、あくまで走ってナンボ・乗ってナンボのスーパースポーツ。
スッキリ爽やかなトリコロールとします。

タンクのトリコロールなスキャロップは角度も面積もラインも全面変更。
周囲のラインに完全に同調します。
具体的には上方向に赤の面積が拡大し、タンクに占める赤は大きく変化。
ウエストライン上げ、赤いタンクとは言わずとも、それなりの面積です。
タンクにあるラクダのコブは消せなかった代わりに、視覚的に低く見せる錯覚を使います。

一方で青の面積は少し減少方向へ。
シートカウル形状が大きく変わった為の変更ですが、逆に赤はアッパーカウル同様に、ボルドー>黒へのグラデーションで、テールまで回り込ませます。
ゼッケン部分はシート形状を若干無視したレンダリングとなっていますが、これは意図したもの。
タンクのラインのサポートを意識し、ほんの少し前方を下げて傾斜を付けることで接することで、水平基調を呼び込ませる錯覚を狙っています。

HRCのロゴは、旧タイプのボールドではなくて、最新のイタリック。
色も黄色い派手な赤ではなく、シックな黒い赤です。
今回の車両には”懐かしロゴ”をそのまま使う場所は一つもありません(あえて言えばシート)。
ガンダムだって赤くなる時代。これはあくまで異なる世界線に生まれたIF車両です。
オリジナルへのオマージュはしつつも、私の作品の基本は「アンチオリジナル」。
StudioQは、ビジネスではなくアートです。

ゼッケンは検討しましたが作らず、ウイングマークの透かしを付与。
車名はCB1100R×CBR1000RR=CB1000RRとしました。
フォントはオリジナルに寄せ、すこし(?)古臭さを出します。
これ見よがしな中央へのドデン!としたロゴ配置が・・・まあ何ともわざとらしいこと(笑)。
でも全てをスタイリッシュに纏めると、このバイクから何のオーラも出て来なくなるので、バランスが何とも難しいのですが、何度もやり直してこれに落ち着きました。
癖って大事です。

似ても似つかない・・・でも”どうしてもCB”なカラーが完成です。
オリジナルと違い、全体的に暗めのトーン。意匠は控えめでクリーンでスポーティーな物。
オリジナルの明るくて角丸、おおらかな存在感に対して、ダークトーンでぎゅっと締め、ステルス戦闘機の様にエッジも鋭く立っています。
立体的で低く・長く・横一列に並んだカウル達からは、古き良き時代の堂々としたものを感じます。
コンパクトでレーシー、尻切れトンボの様なレーサーの面影は、もうどこにもありません。
ネオ・カフェレーサー万歳。
※当時のホンダ開発陣の皆さまには、謹んでお詫び申し上げます。大変申し訳ありませんでした。どうかご笑納いただければ幸いです。