GSX-R1000でカタナを作りたい⑦

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ワンオフ
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ハンス・ムート氏に捧ぐ

特徴がよくわかるスケッチ

「ケルンの衝撃」も知らなきゃ「麒麟」の熱狂的なファンでもない人が見ても、このデザインは勇逸の物。
これは、当時ハンス・ムートさんのデザインチーム「ターゲットデザイン」が作ったもの。
それを”ハンス・ムート作”などと自ら打ち出したために、後に会社を追われることになったハンスさんはちょっとお茶目だけど、そのぐらい衝撃的な工業デザインでした。
前の記事でも書きましたが、このラフスケッチでも、タンクとフロントカウルを一つの塊としてデザインされていることがよくわかります。
カウルやタンクに目が行きがちですが、このバイクのデザインを成立させるには、前後に余裕を持った「長さ」も絶対に必要です。

これはこれですごいんですけど

T.O.Tに突如現れたチームKAGAYAMAが、なんとKATANAで参戦した衝撃は、皆さんも記憶に新しいはずです。
しかし同時に「ああ自分には縁がないものだ」「凄すぎて参考にならない」と思った人も多いと思います。
上物に合わせる為のフレームを個人で作って車検を通せる人なんて居ません。
(大金払えばオートマッジックさん辺りではやってくれるでしょうけど)
けれど、私の様なスズ菌重症患者が冷静になって見ると、ある一つの事実に気が付きます。
そう「車両の首が無い」んです。寸詰まり。

イメージです(笑)

レーサーはサーキットを早く走る為のものなんだから、これでいいんです。
でも、私的にはフォークの角度が立ちすぎです。
デザイン的には、もっと寝かせてフロントタイヤを伸びやかに「前」に出しておくべきです。
そしてフロントカウルもタンクにピタリと付けずに、間隔をあけて、少し前に出しておきたい。
全体的に、左右からギュっと圧縮されてつぶれた車両のように見えてしまうんです。
シートだってあり得ないくらい狭いので、これでは公道で走れたもんじゃありません。
ハンス・ムート氏のスケッチを眺めている限り、カタナの堂々とした佇まいは、こういった”各部のゆとり”が生み出すものだと思っています。

ディメンション的にはこういう事です

ワンオフセットの強みを存分に生かす

完成図をアレンジしながらリファイン

ワンオフならば、長く、短く、角度を少し変えて・・・など、細かくディテールを詰めることが可能です。
そして、気に入らなければいくらでも直せます。
前述した注意点に気を付けながら、ベースとなる車両の特徴に合わせて、ありとあらゆるチャレンジを試しながらトータルバランスを整えることで、グングン格好よくなってゆきます。

ほぼ実車を元にCGにて再構成

各部の細やかなリファインをある程度済ませたら、今度は塗装後の陰影の見え方などをPC上でリアルにシミュレーションします。
このペイントや配色の妙で、オートバイを大きくも小さくも見せることが可能です。
よくある手法の一つを上げるとすれば、タンクの塗り分けで、下部をフレームと同色に塗ってしまう事で、タンクを細く見せたりできます。
今回は癖のあるフレームの艶消しメタリックの「青」を逆に利用することで、タンクを「小さく」「長く」見せることに成功しています。
同時に、タンク下部のサイドカバーからつながる青いラインを、フロントカウルにまで延長する事で(本来フロントカウルにはそんなプレスラインは無い)ぐっと統一感を上げています。

正解はありませんが、センスです。

検討の末、微かに尻上がりになってしまいましたが、デザインで微調整を繰り返したタンクトップラインの水平基調は理想的な形になりました。
あえて乗降性を少し無視しつつも、シート部分のみがすっぽりと落とし穴の様な落差で窪んでいる「ガンファイターシート」形状にデザインし、MOTOGPレーサーの様な雰囲気を醸します。
多少自由をを奪われるものの、ライダーは跨いだ瞬間レーサーとなり、スイッチが入ります。
きっとツーリング中にショーウィンドウに映し出される自分を見て、うっとりする事でしょう。
又、サイドからの写真ではわからないかもしれませんが、幅を押さえた小ぶりなアンダーカウルにすることで、車両の半分より上の大きなボリュームとの落差を作り、乗車時のライダー目線で、魅力的なメリハリのあるボディラインを印象付けました。

良くあるネオクラカスタムは、似合わないのに昔のレーサーのカラーリングを無理に採用したり、当時のステッカーをベタベタ貼ってアピールをしてますが、私に言わせればそれは「お年寄りの懐古趣味」であり、全然”ネオ”じゃありません(はっきり言うとダサイ)。
当時と何一つ同じところが無いカウルなのに、どういう訳かKATANAにしか見えない。
そこには、元のデザインの「どこ」にこだわりが詰まっているのか?を先に読み解いてからであり、そのエッセンスのみを残しつつ、そのほかの部分を「今」に最適化していないからに他なりません。
もちろん、ステッカーやロゴにも同じことが言えます。
変わりたくないのなら、素直にオリジナルのビンテージバイクを選ぶべき。
私は常に過去ではなく、新しい未来を見ています。
STUDIO Qデザインが”温故知新”をテーマにしているのは、このような意味も込められています。

「バイクは自己満足の塊なんだからほっとけ」と言われるのは承知で申しますが、スポンサーロゴも、真っ白で”目立たせる”必要なんて無いと私は常々思ってます。
お金を掛けたことを誰かに自慢したくなる気持ちは分かりますが、それは他人と自分を比較する事でしか幸せを感じることのできない人=心の貧しい人の発想そのものです。
「バイク乗り」を標榜するアニキ諸氏には、どうか紳士であっていただきたい。
ちゃんとヘルメットもジャケットもコーデした上で、さらっと気負わず。
呼吸をするかのように自然に乗っていただきたいのです。
今回は少しグレーっぽい彩度を失ったオフホワイトで塗ることで、車両全体のトーンとマッチさせます。

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