2010年式GSX-R1000 クラシックカスタム⑥

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キャリブレーション ーシートカウルー

途方もない労力と情熱をかけても、現実は理想に程遠いものでした。
大願成就の為にも、ここは妥協せず手直しを行います。
バイクと言う乗り物は、決して必要のない嗜好品です。
すなわち、所有者が「自分かっこいい」と思えなければ価値がありません。

アッパーカウルの形状を変更し、延長した効果をしっかりと車両になじませるには、このシートにもその流れを汲んだ形状が必要です。
ほんの僅かな角度の違いですが、それを実現する為にはこの1cmはとても重要なのです。

ザリザリザリザリ・・・・・・・躊躇せずぶった切ります。
これは私の良いところ(だと思いたい)です。

せっかく作った折り返しごと切り飛ばしましたが仕方ないです。
手間よりも理想を追い求めます。
この頬を伝う物は・・・・・・涙じゃありません。汗です。

そーれ見た事かっ!
私的には、ぐっと良くなりました。
まあ、この写真じゃ分からないかもですが・・・・・

引きで見れば大分違うことが分かりますかね?
サイドカウルの角度とピタリと合った事で、アッパーとのつながりが150%増しです。
全体のマッチングが強烈に上がり、ようやく車両としての一体感が出てきました。
たったこれだけのことなんですけど「まだ出来ることは無いか」と毎晩寝る前に考えます。
空間デザインはこの繰り返しであり、作っては壊しを繰り返す過酷な作業です。
皆さんにお届けする車両は、毎回こうして生み出されます。

あ、肝心の水平線問題がまだでした。
ここまでシートのデザインが改善されてくると、もう期待しかありません。
結構難しいのですが、一気に進めます。

今回は、上の不要部分を切り飛ばすのではく、下の下駄を削ることで高さを抑えてみます。
カバーの下にはシートキャッチの為の土台を収める空間が、ある程度必要だからです。
この辺は何台も世に送り出した者のみが分かる世界です(笑)。

電動ソーで上手にカットして揃えてみました。
電動とは言えど、物をまっすぐにカットするのは実は難しい。
大工さんは手鋸で信じられないほど真っすぐに木材を切ることが出来ますが、一連の洗練されたフォームと、一糸乱れぬ息遣いには惚れ惚れします。
そういう意味では、私はダメダメです。

これでようやく「整い」ました。
スタンドを外しているので傾いており、そう見えていないかもしれませんが、すべてのパーツが調律された状態です。

スタンドを掛けてタンクとシートを撮影してみました。
ラインがビシっと出ています。
見えない水平線がそこにあるかのようです。

恰好ばかり整えても、しっかりと車両に取り付けられなくては意味がありません。
そしてもっと言うと、簡単に脱着できる簡素な仕組みでなくてはいけません。
何故ならこれは、常に整備が必要な公道を走るオートバイだからです。

最後の仕上げに、PP板を適当に切り出してシートを正確に固定する為の仕掛けを作ります。
こういう不思議なものを簡単に思いついて作れるようになったら、立派な変態です。

カウルの一部を大きく切り欠いて成形します。
折角作った物をぶった切るのが、つくづく好きな私です。
あーら不思議。先ほどの変なパーツは、この窪んだ部分の内壁になります。

いつものように、繊維多めのファイバーパテを作って成形します。
繊維多めのヒゲ引きパテは、固まると強度抜群です。

はい、整いました。
これで無理のない、シートの完璧な固定が実現します。
この窪みはシートクッションを付けると、良い感じに半分隠れるので目立ちません。
純正のシートカウルは、パズルのような構造であり、よっぽど慣れていないと爪を折ってしまうようなものでしたが、これだとシンプルに脱着も出来るのでストレスフリーとなりました。
形やよし!整備性もよし!ん~めでたし!。

キャリブレーション ーミドルカウルー

まだあるの?とお思いでしょうが、ありますよ。
ギトギトのパテだらけになった挙句、熱で歪みまくったミドルカウルです。
カウルの折り返しがテキトー過ぎて気に入りません。

反り返っていたり、角度がキツ過ぎたりしている部分がわずかにありますので、電動ソーで歯を入れて修正してゆきます。
メキメキ・・・・ボキボキ・・・・と手で多少折ってしまいながら変形させ、アルミテープで固定します。
その上で裏からファイバークロスを貼って固めます。

幾度となく成形を繰り返しながら、何とか形になってきました。

マスターモデルにするのは歪みが多すぎるので、印をつけてどこにパテを盛るのかを確認します。
結局最後は、自分の目と、指先の感覚だけが頼りです。

ジャッキアップすると、すべてのパーツに意味があることを確認できました。
今までの作業の苦労が走馬灯のように脳裏に蘇りますが、成仏しかけている場合じゃありません。
まだ、サイドエアダクトの位置を出しておく必要があります。
ダクト部分の面取りは不要にもなるのです。

いつものようにレーザー墨出し器を使って行きます。
これがあると、穴をあけるときにほぼ一発で正解を当てられるので便利です。
ほんと!誰が考えたんでしょうね、これ。
こんな風に使われるのは、想定外だったでしょうけど(笑)

今回は、ラジエーター裏からの熱気を、出来るだけ外に排出するのが目的です。
純正ではそのようなカウルデザインではないので、機能的には無くても困ることは無いんでしょうが、古いYOSHIMURAカラーを考えたときには、あった方がアクセントになります。

切ったり張ったり、また切られたり・・・・・・本当にこいつには気の毒なのですが、最後まで実験に付き合ってもらいましょう。
おかげさまで、ようやく理想の形が見えてきました。

カウルを加工するのにもいろんな武器が必要です。
年齢を重ねてきたせいか、めっきり握力が落ちてきたので、電動工具が増えました。
電動工具は勢いがあって良いのですが、その分色々なものが飛散します。
呼吸でヒュームを吸い込んだり、物理的に目に入ったり、切り傷も絶えない・・・・ので一長一短です。
しかし、やっぱり楽なので使ってしまいます。

可哀そうに、落書きされまくり、穴だらけになったミドルカウル(笑)。すまんな。

だいたいこんな感じでしょうか。
1986年式から89年にかけて、一気にスズキのバイクのエアダクトの形が変わりました。
油冷エンジンから水冷エンジンへの変更は、デザインにも大きな影響を与えています。

てきとうに切り過ぎて曲がってしまいましたが、この後修正しました。
またしても・・・・体中粉だらけになったのは、言うまでもありません。

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