ファイバーパテを準備する
さあ、重労働の始まりです。
まずは予め、ファイバーパテを作っておきます。
マスターモデルを元に型を作るに当たって、私の作る作品はかなりエッジが効いており、量産するには全く向いていません(その分カッコイイけど)。
鋭角な部分はガラスマットがなかなか追従せずに、浮きあがってきてしまうため、そこを埋めておくべく、ファイバーパテが必要になるという訳です。
事前に、ある程度の量のタルクを用意しておきます。
タルクの量に合わせて、ガラスマットを少々むしり取って、ハサミで千切りにしてゆきます。
チョキチョキとランダムにやっていると、綿菓子のようなガラス繊維の雲が出来てきます。
これをタルクと混ぜることで、強度のあるファイバーパテが出来ると言う訳です。
両者のつなぎにはFRP樹脂をドブッと入れます。
ノンパラフィンでもインパラフィンでも良いのですが、重ね張りを行う前提の作業ですので、パラフィンで閉じる必要が無いので、ここは硬化してもベタベタしたままになるノンパラベースで進めます。
手もベタベタになる作業なので、常にアセトンをそばに置いておくと作業性が上がります。
グリグリと混ぜ込んでゆくと、やがてファイバーパテが出来上がります。
最後にFRP樹脂の硬化剤を数滴混ぜてかき混ぜます。
タルクとFRPの素材があれば、ファイバーパテは無限に作れますし、造形に大変便利です。
繊維の量や切り方を調整することで、繊維質なパテかそうでないかを調整可能です。
あまり力が掛かるところにパテだけを大量に盛ってしまうと、強度の面で不安があります。
ファイバーパテは、繊維を入れておかないと衝撃に弱く、バキンと折れることがあります。
反対に繊維が多ければ多い程、ある程度衝撃に強くなります。
写真の様にヒゲが付く程度に繊維を入れておくと、抜群の強度になります。
マスターモデルに上手に壁を立てれたら、黒ゲルに硬化剤を混ぜ刷毛で塗り込みます。
ゲルコートが乾燥して硬化したら、今度は壁とマスターに出来てしまった鋭角な角や溝に対し、このファイバーパテで埋めて行きます。
そうすることで、角や溝を丸めてなだらかにしておき、ガラスマットを築層しやすくします。
絶対抜けなそうな細かな掘り込みや、エアダクトの部分などにもしっかりと詰め込んでやります。
この辺はガラスマットではどうにも浮き上がって来てしまい、築層不可能だからです。
マットの切り出しと築層
型を作るにはマットも樹脂も大量に消費します。
樹脂は20kgの一斗缶、マットは10m単位で買わないと消費に追いつきません。
信じられないかもしれませんが、あっという間に消費します。
石の様に硬くするには、樹脂もマットも大量に必要なのです。
マットは貼る前に、ある程度型紙に合わせてカットしておきます。
型は最低でも10層以上築層しなくては強度が出ませんので、この型紙に沿ってカットしてあるマットも10枚以上必要です。
これを全部ブロックごとにカットして、あらかじめ全部用意するだけでも一苦労です。
マットはそれだけでは貼れません。
このガラスマットは「ほぐす」前の物で、パリッとした糊が効いています。
FRP築層においてはこの「糊が効いている状態」はNGで、このままだと樹脂が浸透しても、あまり柔らかくなってくれません。
ガラスマットをほぐすのには、結構握力が必要であっという間に手が痛くなってきますが、休み休み必死に手揉みすると、最後はこのように「ゆるふわ」になってくれます。
こうなると手で簡単にムシってサイズ調整も出来るし、樹脂の含侵も早くなり、ある程度複雑な形状でも追従するようになるので、築層がぐっと楽になります。
しかし!逆に言うと、先ほどカットした何十枚ものガラスマットは、貼り込む前に全部揉み解さなくてはいけないと言う事です。
量が量だけに、大変な作業です。
そんなこんなでようやく準備が出来たので、1ブロックごとに貼ってゆきます。
隣のブロックに絶対はみ出ないように注意しつつも、ギリギリまでマットを貼り込んでゆきます。
これを1ブロックで最低10回繰り返さねばなりません。
樹脂は硬化剤を入れたらすぐ反応が始まるので、もたもたしているとあっという間に樹脂が固まってしまいます。
そういった理由から樹脂は一気にたくさん作ることも塗ることもできないため、リズムよく連続的に無駄なく進める必要があります。
先ほどの様に入念な準備が必要だったのには、こう言った訳があります。
硬化後はザクザクになってしまうガラスマットに加えて、滑らかなガラスクロスも用意します。
これは最終的な表面の仕上げに使うマットです。
手触りや見栄えを気にする場合など、製品の裏側に使われることが多い商品ですが、型の場合は最後に貼る外側表面の最終層に使います。
製品とは違って、型は見栄えをあまり気にしなくてよいので、多少気泡が入ろうが何だろうがスピーディにドンドン進めてゆきます。
これでようやく1ブロック特捜が完了しました。
温かくなってきたので硬化剤の量を減らすのを忘れてしまい、火傷の様な膨れが結構出来てしましましたが、あまり気にせずガンガン築層します。
完全硬化する前の半乾き状態の際に、カッター等で綺麗にバリを取っておくのがポイントです。
隣のエリアに樹脂が垂れてしまうことで、隣り合っているエリア同士が繋がってしまうと、脱型時に悲劇が起こるので、壁の向こうへはみ出さないように、細心の注意が必要です。
この大きなブロックがあと3つもあるなんて・・・・・ちょっと憂鬱になって来ます。
型の築層作業自体はそんなに長時間でないのにも関わらず、その為の準備が物凄いので、1ブロック/半日ぐらいのペースでしか進めません。
今夜は1ブロックでギブアップですが、この後も地味にコツコツ進めます。