【DIYマニュアル】ウレタン2液塗装で自家塗装~上塗り編

ペイント

ウレタン2液塗装は、強固な被膜でプロも使っている塗料ですが、その特殊性や手間などに関する敷居の高さから、なかなか手を出せずにいる人も多いと思います。
ここでは、私が自己流で今まで実践してみた経験からの「塗装の上塗り」を公開します。
これまでの失敗の積み重ねと、DIYと言う環境下でのリアルをベースに解説します。

塗る前に

塗装マスクをした完全防護服の人

下地作りでもさんざん言いましたが、塗る直前にやることはただ一つ「綺麗にすること」です。
これは塗る物が3つあったら3つとも一つずつでやってください。
シリコンリムーバーをウエス(ティッシュは埃が大量に出るのでNG)に含ませ、ぐるりとすべての塗装面を撫でておきましょう。
シリコンリムーバーが緩やかに乾いてきたら、新しいニトリル手袋に交換してから、そっと対象物を持ち上げて、息を殺しつつ角度を変えながらライトを当てて、ほこりが無いかどうかを見極めます。
風の侵入が無いガレージ内でさえこの調子ですから、いかに屋外で塗装することが無謀かがわかっていただけるでしょうか。
そのうえで、埃が残っている場合は、エアガンで「プシュッ!プシュ!」と飛ばしておきます。
さあ!これですべての準備が整いました。

隠ぺい率って何だ?

黒・青・赤・黄の絵具が飛び出している

多色塗装の基本について、私が知っていることをすべて説明します。
ここで学んでほしいのは”隠ぺい率”と言う言葉です。
意味としては、下地の色に吹いた場合「簡単に吹いた色で下地の色を隠せるか」また「吹いた色が下地の色に影響を受けず本来の発色をするか」と言う事だと理解してください。
例を挙げれば、黒い下地に対して「鮮やかな赤」を塗ろうとした場合、「鮮やかな赤」の隠ぺい率は弱く、下地の黒に引っ張られてしまい「落ち着いた感じの赤」に替わってしまう事があります。
私の知る限り、赤・青・黄は隠ぺい率が低く、下地に白を塗ってから塗るべき色だと思っています。
ついでに言うと、シルバーやゴールドも隠ぺいが弱く、ムキになって一回で重ね塗りすると垂れます。
そしてメタルック塗装はソリッドカラーとは違い、ムラになったり垂れたりしたらもう「全部やり直し」が決定します。
そしてここで思い出してほしいのは、サフェサーは見ようによっては「白」なんです。
この白っぽい下地を活用せず、最初から全部真っ黒にしてしまってから、ほかの色を塗るのでは非効率なことが分かりますね?。
このような色の隠ぺい力=強さを考慮して、各自図案の色を塗る順番を考えましょう。
でも「じゃあ黒を塗ってからゴールドやシルバーを塗るのはダメなの??」と思ったそこのあなた!!違いますよ。

GSX-R1000 K3のカスタムペイント済みガソリンタンク

このタンクは黒を最初にバサっと塗ってから、隠ぺいの悪いであろうシルバー(厳密にはガンメタ)を塗装しているんです。
上記でも書きましたが、このシルバーを塗る部分には・・・実は先に「白」を塗ってから乾かし、その上にシルバーを吹いているんです。
それによってイメージ通りの発色となり、各パーツ同士の色がピタリと揃います。
当然、黒1層<黒+白+銀3層となり、それぞれの高さに差が出て段が出来ますが、これをクリア層で何とか埋めてゆきます。

シンメトリーを取る

サフェサー済のKawasaki Z1000 2007

シンメトリなデザインをするのは本当に大変です。
センターを出したからと言って、複雑な曲線を描くラインが左右対称になど描けるはずもありません。
この場所から〇cmぐらいの大体の見当は付くものの、それを何百回もするなんて、ちょっと気が遠くなってきてしまいます。

Kawasaki ZX-10R用のワンオフNinjaアッパーカウル

なので私は、とっても原始的な方法を取っています(笑)。
そう!お裁縫の要領で「型紙」を作っているのです。
ラインをテープで引いたら、その凹凸に沿ってそっと鉛筆を這わせて、線を写し取ります。
完成したらテープ等で補強してから、それらをラインに沿ってカッターで切り抜きます。
あとはひっくり返して反対側にもマスキングテープで止めておき、ラインを引くことが出来ます。
最後の最後に、センターラインからの距離や、実際に自分の目で見ておかしくないか確認して、修正したりします。
簡単でしょ?(笑)

塗り方

色を作って塗る場合は、混ぜ合わせた色同士を、100円ショップなどで買ってきた金属製のマドラーでグルグルと撹拌して、しっかりと混ぜ合わせてください。
シンナーと硬化剤を指定通りに混ぜ合わせてさらに撹拌した後、コシ紙を通してガンのカップに注ぐことでごみを取り除いてください。
この後、いきなり吹くのではなく、必ず段ボールなどに一回試し吹きして、濃度を確認しましょう。
マドラーを塗装カップに突っ込んでからサッと引き上げたときのしずくの垂れるスピードを見れば、大体どのくらいがネバネバでシャバシャバなのか見当がつくようになります。
濃度に関しては季節や温度に影響されるものの、文章で伝えられる限りのことを書き残しますので、是非参考にしてください。

  • 濃い状態に現れる症状
    スプレーガンのノズルから出てくる塗料ミストが大きく、大袈裟に言うと糸を引くように粘る為、塗装対象の表面が、全く艶の無いかなりボコボコの状態になってしまう状態。
    薄め液であるシンナーの量が足りていない為粘土が高く、伸びないのでこうなってしまいます。
    こうなったらすぐさま塗装を注視して、塗料を薄めてください(決して向きになって全部塗らないで!)。
    また、全体に塗ってしまった場合は、裏技としてその上から薄め液のみをガンでスプレーすることでボコボコの肌が溶けてきて落ち着くことがあります。
    ただこれは禁断の技で、高い確率で垂れまくるので、メタリックの場合は諦めてください。
  • 薄い状態に現れる症状
    塗装後、塗膜が色別れしてしまい、立面で垂れまくる場合、は薄め液が多すぎて「シャバシャバ」な状態だと言えます。
    塗料が少なすぎるので、塗装を中止し塗料を追加してください。

スプレーガンは口径は、小物を塗るなら0.5mm~1.5mmぐらいがいいと思います。
基本は、パターンを広めになる方向にねじを回転きって固定し、対象から均等に15cm程度話して薄く塗りつつ、1回塗るごとにインターバルタイムを15分程度置いて乾燥させ、合計2~3回で完全にその色で隠ぺいする気持ちで塗装してください。
最初から近づいてドバーっと塗るなら、もうペンキで刷毛塗りでもしてください(笑)。

メタリック塗装はコツが要る

SUZUKI GSX-R1000 K3の再塗装済みガソリンタンクキャップ

これはレストアした際に塗装した、ガソリンタンクのコックとそのリング部品です。
メタリック塗装は上手く濡れれば綺麗なのですが、実は非常に厄介な色です。
単純に言うと、細かく砕いたアルミの粉が塗料に交じっているわけですが、あまり濃度を薄くすると、塗料の中を、塗料よりも重いであろうアルミの粒が、塗装後の表面上でさえ「動く」事があるのです。
塗料が出てくれなければ塗装が出来ないのですが、このアルミの粒子もドバドバ出るのはちょっと困るので、メタリック塗装時にはガンのつまみを絞り気味にする必要があります。
具体的にはパターンつまみを真ん中まで戻し(中位固定)、その上で塗料の量を調節するつまみを出来るだけ絞り、更にエアーの量を大きくして、ソリッドよりも離れたところから強く吹き付けます。
せっかく低圧のいいガンを使ってても、こればっかりは派手に吹き返しが出るし、周囲の物を巻き込んでごみとなり、対象に付着する危険が大きくなってしまいます。
しっかりとマスクをすることは当然ですが、塗装前はブース内も念入りに掃除機をかけるといいです。
腕を素早く動かし少しずつ重ね塗りすることで美しく塗ることが出来るのですが、逆にあまり同じところを近くから何度も往復してしまうと、アルミ粒子がそこにだけ折り重なってしまい「黒ずみ」「ムラ」となってしまうため、全部やり直しになってしまいます。
当然ですが垂れた瞬間「やり直し」決定です。
メタリックはとにかく回数をこなすしか上達の方法はありません。

ぼかしたい時

カスタムペイント済のKawasaki ZX-10R用 ワンオフNinjaカウルの一部

さあ、散々メタリック塗装で脅かしましたが(笑)それも全部私が経験した失敗です。
そのうえで「ぼかし塗装」をしようだなんて猛者が居るかどうか「?」ですが一応これにもコツがあるので、書いておきます。
まずスプレーガンのセッティングですが、エア圧は低め・パターンは真ん中に固定してください。
当然塗料の量も絞らないと、掛かってほしくない所まで塗料が飛んで行ってしまいます。
ここでポイント!
例えば右から左にグラデーションする場合、距離を遠くへ離しながら左右に均一に吹くと思っている方が大半だと思うんですが、これは大きな間違いです。
上記ガンのセッティングならば、塗料がほとんど出ないので、距離などは変えずにグラデーションが終わってほしいところで「ピタリ」と止めてしまって結構です。
もちろん止めると同時にガンから手を離して、そこに留まって吹くことの無い様にすべてを「ピタ」っとやめてください。
実はこれが綺麗なグラデーションのコツであり、これを守らず「吹きながら離れて行く」をやってしまうと、汚く塗料がいつまでも飛び散ってしまい、グラデーションと言うよりは「マスキングをしくじって別な塗料が掛かってしまった」みたいな仕上がりになります。

クリアの話

塗装済みカウルのクリア層を水砥ぎする

さあ!いいいよ終盤です。
ここまで塗装してきた塗膜を、クリアで閉じ込めてしまいます。
その前に、ニトリル手袋をした上で塗膜をよーく確認してください。
クリアを塗る前に、直すべきところやはみ出し等があれば直しておきましょう。
クリアを塗ってしまうと、下にあった塗膜は透明なツヤツヤに包まれて濡れたような感じに変化するので、クリア前の塗装面を少し削って白っぽくなっても、クリアが包んで分からなくしてくれます。
デザインナイフやカッターで削ってもいいし、精密にマスキングした後に、麺棒を塗料に浸してそれを筆代わりに、はみ出した部分にだけポンポンと叩くように塗ってみてもいいでしょう。
クリアーは吹いてからインターバルを置きながら3回、出来れば5回重ねて塗ってください。
広い面はともかく、角などの部分は砥いだ時にクリア層が無くなって、下塗りが出てきてしまったりするといけないので、特にしっかりと重ね塗り押してください。
乾燥後、クリアが垂れた場合は、#400の耐水ペーパー等でしっかりと凹凸を取っておきましょう。
そのうえで、全体を#600➡#1000➡#2000と続けて研磨します。
番手を上げるごとにドンドン滑らかになって行くのが分かると思います。

磨きの話

ALLペイントした、ポリッシング中のKawasaki ZX-10Rのガソリタンク

これは、わざと磨くのを途中で辞めて、違いが判る様にして撮った写真です。
#2000まで磨くと、このように艶消し塗装のような(黒板みたいな)状態になります。
手で触れても何も感じることが無いくらいスベスベな艶消し色です。
ここまで来たら、フェルトバフにコンパウンドを付け、電動工具でポリッシングすれば終了です。
ポイントとしては、この「番手上げ磨き」を絶対に飛ばしたり、さぼってはいけません。
#1000でやめても、#1500でやめてもダメです。
必ず#2000まで順にあげることです。
そうしないと「いくらポリッシングしても全然テロテロにならない」「シャカシャカのまま」になってしまいますので注意です。

  • 塗装直後は近くで埃を立てない事(ティッシュ厳禁)
  • 塗る順番は色の隠ぺい力に関係している
  • 塗料の濃度調整は体で覚える
  • メタリック塗装はソリッドとは全然違う
  • ぼかしはガンの動きに注意
  • クリアは番手を上げながら削ぐ
  • ポリッシングでテロテロにするには#2000が最低ライン

いかがでしたか?
私なりに、これまで塗装を続けてきて思う事や、ごまかし方のテクなども入れちゃいましたが、本当にこうやってるし、これで上手く行っているので、全部読んだら基本的なスキルを身に着けているはずです。
こうしてみると、これはあくまで基本でしかなく、プロの方々はこれをすごいスピードで進めて、一カ月にいくつもの仕事を完成させているという訳で、改めてその「凄さ」が分かります。
このように、塗装とは材料費ではなく、その準備と手間の塊なので、費用が高くなるのは当たり前という訳です。
これらすべてを理解した上で、あなたも是非「DIYペイント沼」に一緒にハマってみませんか?(笑)

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