GSX-R1000でカタナを作りたい⑨

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ワンオフ
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細部のディテールを煮詰める

ネオカフェスタイルに本当に必要なもの

車両全体のデザインを決定付けるパーツとして、今回はサイドカバーを作成しています。
ネオカフェ作成の決め手は「アッパーカウル」だと思っている人が多いのですが、それは大きな間違いです。
後述しますが、それはサイドとアンダーで決まります。
今回モチーフにした刀をこのルールで見たときに、アイコンワンサウザンド(iCon1000)などがとても分かりやすいお手本になります。
他メーカーだと、YAMAHAのファスターズサンなどもそうですが、海外の方は色々と飾らずに「絶対残すべきところ」のみを残してほかを潔く排除してしまうので、いかに私たちが「ここはこうじゃなきゃいけない」と言う先入観を持っていたかを気付かせてくれます。

潔すぎるけど、言いたいことは伝わる。

オンロードモデルにおけるサイドシュラウドは、古くはSUZUKI GSR750でも採用されており、最近だとKAWASAKI Z1000やHONDA CB1000Rなどにも見られる手法なので、別に目新しい物ではありません(しっかし・・・全部売れなかったバイクだなw)。
ネオクラシックのベースとなる現代のバイクは高性能であり、大熱量を放出するので当然大きなラジエーターが付いており、これがOLDスタイルを追求するのの邪魔になることがしばしばです。
バイクの上半身と下半身の間を「エンジン」で切り分けた軽快なデザインであるカフェスタイルを、現代のバイクで成立させるには、ラジエターを隠す意味でもサイドシュラウドは重要です。
そして今回は、そんなサイドシュラウドを、カタナの”鋭角な刃先”をイメージして作ってみました。

スパっとね

これがたどり着いた形です。
長すぎず、短すぎず、ただのカバーにならぬように、内側に折り込んだ鋭角で立体的な造形としましたが、これは日本の伝統的な文化「折り紙」をイメージしています。
今回は「Born in Japan」である伝説のバイク「刀」を作成するので、温故知新のテイストを入れようと思い、この”折り紙デザイン”を採用しました。
オリジナルで作成したアッパーカウルにも、このデザインコンセプトは引き継がれています。

分かりますか?折り紙w

正面から見るとこんな感じになって見えます。
前からの空気を、上手くラジエーターへ導く機能的な形を採用しています。
一度長い物を作りましたが、存在感が出過ぎてしまったので、黒くしたうえで短くしました。
サイドから見たときの、アンダーカウルとの繋がりも意識しています。

遊び心を

お気づきの方も居るかもしれませんが、今回アッパーカウルにウィンカーは存在しません。
この”折り紙デザイン”を完成させるために、あえてウィンカーレスにしています。
そしてそのウィンカーはスモークタイプの縦型LEDウィンカーとして、サイドシュラウド内にビルトインする予定です。
スマートにデザインしつつも、実用性や法律はしっかり守るのがstudio_Qデザインです。

最後のマスターピース

悩みに悩んでいます

カフェスタイルのバイクが”浮き気味”に見えないようにするには、このアンダーカウルのデザインが非常に重要になります。
全体のデザインを落ち着かせ車両になじませる効果や、視覚的にまっすぐに長く見せることが出来るアイテムです。
長すぎても短すぎても変になり、実は形状も様々なパターンが存在するので、非常に奥が深い世界です。

試行錯誤の上、今回は車両にピタリと添わせる無駄のないスリムなデザインで、船型のオートドックスな物にしました。
ガソリンタンクの延長によって、上半身の”長さの演出”が非常に効いており、車両イメージを補う為にアンダーカウルに、あまり頼る必要が無くなった為です(逆に言うとアンダーカウル一本で何とかすることも可能です)。
それゆえに、あまり長くなく、幅も細い物が最適と導きました。

アンダーカウルのエンドは滑り台形状にして成形し、ここまで角を張らずに最終的に丸める予定です。
試作を繰り返した結果、出来るだけ存在感が無い方がよさそうです。
エキパイの継ぎ目にあるO2センサーのボス部分が醜いと感じたため、それを隠す為の最低限の隠ぺいを考えた形状としています。

段ボールで取り付け位置の確認や、スケール感を合わせたら、それに合わせてPP板を切りし出して簡易の型を作ります。
この作業は、地味で大変時間のかかる、根気が必要な作業です。
よくこれにそのまま養生テープなどを張り付けて型にする記事がありますが、あれは小さなものならまだしも、このような大きくて平滑性を求められる面が広い物には、全く向いてません。
大量のパテと時間が必要になるので、時間を掛けてでもPP板の3重張りで反らないようにして、型を作った方が結局早くてよい物が出来ます。

ようやく型が出来たら、黒ゲルを流し込んでしっかり乾燥させた後、FRPを張ってゆきます。
脱型後のマスターモデルのベースに、ドンドン修正を加えてまた成形の繰り返しです。

こうして思い描いたものは、幾度ものプロトタイプングによって、少しずつ現実となってゆきます。
”PoC”と言うIT用語があります。
Proof of Conceptの略で、「概念実証」という意味です。
新しい概念や理論、原理、アイディアの実証を目的とした、試作開発の前段階における検証やデモンストレーションを指して言う言葉ですが、ワンオフカウル作成と言う付加価値や仕様を検証・実証する際に、重要なプロセスとして採用しています。
私が考える”新しい概念”は、全体の仕様決定がとても難しいため、この概念実証(PoC)を繰り返しながら、少しずつ確認してゆく手法を取り入れています。
細かい拘りがふんだんに詰まったパーツは、それらが混然一体となる日を目指して作られてゆきます。

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