RN46J XSR900 CafeRacerカスタム①

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YAMAHA
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The Performance Retroster?

YAMAHA MT09

YAMAHAの発売した挑戦的なジャンルのオートバイ、MT-09のプラットフォームは様々な形で展開されましたが、その最後の最後にネオレオロとしてXSR900が登場しました。
基本形となったこのMT-09は、既存概念を覆す有機的な形状をしたアルミフレームに、少し前傾した水冷の3気筒エンジンという、唯一無二の組み合わせとなり、非常にコンパクトにできています。
これが”レトロ”と言う文法ではどうか?と言うと、すべての物の位置や形が前衛的でユニークなこのオートバイは、かなり相性が良くないと思います。
個人のカスタム前提で考えたら、まずベース車両にコレを選びませんが、YAMAHAはヨーロッパでの急激なレトロブームの広がりに合流すべく、このMT09をベースにリ・デザインに挑戦します。

YAMAHA XSR900

コンパクトで背高。ローでもロングでもないこの不思議な形をしたフレームに、デザイナーは相当手を焼いたはずです。
特にガソリンタンクなどにはデザイナーさんの苦労が伺えるポイントです。
本来は長く見せたいのに、後ろに延ばすことが出来ないガソリンタンクを、なんと前に伸ばして長さを演出するという涙ぐましい努力をしています。
若干シートの形や長さ、角度などにデザイン上の辻褄合わせを感じはしますが、与えられた条件下ではこれ以上はもう無理です!という限界まで頑張った、見事なパッケージだと私は思います。

TRACER900

実は、MT09にはまだ兄弟車種があり、大型のカウルを付けたTRACER900と言うモデルがあります。
俗に言うアドベンチャー系なのですが、コストの問題からこの3車は色々な部品が共通です。
しかし、大物パーツの中で、唯一スイングアームだけTRACER900は別なものが奢られます。
悪路での走行や直進安定性を重視する場合、ホイールベースはどうしても伸ばしたい。
TRACER900のスイングアームは、フレームピボットからアクスルまでの距離がXSR900のそれよりも、少しだけ長いのです。
アフターパーツだと、チェーン引きなどを交換する事で、ロング化したりしますが、そこはやはりメ-カーさんです。
ちゃんと別な金型を用意し、ほぼ同じデザインの長さ違いのスイングアームを出してきました。

・・・という事で、それらを比較すると、有に5センチ以上違うことが分かります。
つまり、コンパクトなXSR900にとって、兄弟車種TRACER900のスイングアームは、安心の”メーカー純正品ポン付けロングスイングアーム”になるということなんです。
カフェレーサーはロー&ロングが基本ですので、これは”引き出し”として押さえておきたいTipsです。

カフェレーサーの系譜

さて、XSR900の生い立ちは前述の通りですが、それらが追い求めたであろうヘリテイジ、レトロの源泉となった”カフェレーサー文化”にもここで触れておきましょう。

カフェレーサーとは、1960年代にイギリスで流行したバイクのカスタムスタイルです。
当時、ロンドンのACEカフェに集った、ファッションや音楽に敏感な若者たち(要するに不良)が公道でレースをするために「速く、カッコ良く」とバイクを改造したことがその始まりと言われています。
カフェレーサーは、快適性や利便性よりも、公道レースに勝つための速度や旋回性能を追求しており、当時のグランプリロードレース車両を模倣したもので、80年代で言うところのレーサーレプリカ、最近でいうSS(スーパースポーツ)と言ったところです。
現代のカフェレーサーは、ネオレトロ・ネオカフェなどと称し、低いハンドルとバックステップでスポーツに特化したポジションのネイキッドというイメージが定着しつつあります。

カフェレーサー文化発祥の地、イギリスのメーカー”トライアンフ”は、往年のスラクストンの名を冠したロケットカウルのクラシックレーサーを製造・販売しています。
イギリスメーカーとしては、カフェレーサーの王道は押さえておきたいのでしょう。
大排気量でありながらワイヤースポークホイールを採用し、真っすぐで細長いガソリンタンクとスリッパの様なシングルシートの組み合わせは、ノートンマンクスに代表されるカフェレーサーへのオマージュ。
マフラーのパイプレイアウトも直線基調で水平が取れており、とてもシンプルです。

トライアンフもオマージュする本家本元のノートンは、コマンド961SEと言うドストライクなモデルを製造・販売していた時期がありました。
ノートンマンクス直系の血筋であり、当時のデザインが現代技術により見事に再現されています。
残念ながら、既に販売は終了となっていますが、現存すれば凄まじい価値でしょう。

そうそう、カフェレーサーはイギリスだけの物ではありません。
イタリアのメーカーも負けてはおらず、中でもドゥカティは時々カフェレーサーを作ってきました。
その中でも特に異彩を放つのはこのMH900eと言うモデルです。
MH900eは、ドゥカティが2000年に世界限定2000台で発売したバイクで、1998年のケルンショーで発表され、ピエール・テルブランチの最高傑作デザインとされています。
MH900eのモチーフになったのは『DUCATI NCR 900 TT1』で、これは1978年にマイク・ヘイルウッドさんが乗り、マン島TTレースで優勝したマシンです。
つまり、MH900eの”MH”は、マイク・ヘイルウッドさんのイニシャルで、最後の”e”はevolutionのe。
当時、ドゥカティはマン島TTレースで優勝した記念として『900MHR(マイク・ヘイルウッド・レプリカ)』を発売しましたが、このMH900eはカジバ傘下から独立した際の記念として、それを再解釈し、限定記念モデルとして新たに作り上げた芸術品です。

MH900eが放ったケルンの衝撃から約6年後。
ドゥカティから発売されたポールスマート1000LEは、2006年に、わずか2,000台だけの限定生産車として発売された「スポーツクラシック」モデルです。
MH900eと比べると、随分と普通に見えてしまいますが、細部を見ると中々凝った作りです。
モデル名になったポール・スマート(Paul Smart)とは、1960年代から70年代にかけて活躍した英国人ライダーのこと。
彼は、1972年のイモラ200(マイル)レースで、ドゥカティを駆って優勝。
その時のマシンのカラーリング(ブルーのフレームにシルバーの外装)は、ポールスマート1000LEのモチーフになりました。
この写真は、ポールスマート1000LEの発売後、ヘリテイジスタイルのレーサースタイルを持つレギュラーモデルとしてラインナップされ直した、スポーツ1000Sと言う通常モデル。
真っ赤や真っ黄色の車両は2008年から僅か1年足らずのデリバリーでしたので、通常モデルとはいえ、これもまた路上で出会うことは稀でしょう。

一方日本は?と言うと、2017年のミラノショーでは、ホンダからのコンセプトモデル「CB4 Interceptor(インターセプター)」発表され、世間を騒がせました。
EICMA2015に出展した「CB4 CONCEPT」と言うコンセプトモデル(これはのちにCB650となって正式にリリースされています)の進化モデルという位置づけでしたが、如何にも好き者デザイナーが考えたと言った体で、使い勝手を完全に無視した理想を具現化したようなコンセプトモデルでした。
ホンダはこのデザインを、多少競技志向に振って見事に実車としてまとめ上げた訳ですが、完成した車両は超絶クールなロケットカウルとセパハン、そしてバックステップが特徴のモダンなカフェレーサーとなりました。

片持ちのロングスイングアームによって思い切って後方に延長されたリアタイヤは、もはやシートから半分以上もはみ出してしまう始末。
格好はいいんですが、バイクとしてホントに峠で走るのか?と心配になる程です。
上面に逆Rを持つ3次元曲面をまとった、ちょっとやりすぎ感のあるフロントカウルは、いやでもマシンの前後長を強調し、カフェレーサーの”ロー&ロング”と言う文法通りの佇まいです。
大きくなったボディを視覚的に締める為に、あえてマットブラックで統一されたボディーと、赤く彩られたブレンボ製キャリパーがキラリ。
流れるような一体的な面構成が、レーシーかつスポーティーな雰囲気を更に増しています。

「こんなものが、このまま発売されるわけがない。」
そう思っていた矢先、NEO SPORTS CAFEとしてかなり近いモデルがCB1000Rとして登場します。
CB1000Rの二代目・・・?と言われても、初代モデルが道で走っているのを見たことが無いほどの不人気者だったこともあり、それ良い事に?!先代のストファイ路線を翻し、ネオレトロ系に大きく方向転換したバイクとなりました。
誰も知らない不人気者の名前を借り、突然現れたネオ・レトロスポーツでしたが、デザインは凝りに凝っています。
しかし、デザインには拘りを感じるものの、エンジンは3モデルも前のCBRのおさがりエンジンを使用。
カフェレーサーとして考えれば、145馬力は必要にして十分なのですが、ホンダとしては何とも中途半端な印象を受けます。
更に悪い事に、マーケティングの苦手なHONDAさん。。。
見事にプライシングをミスった(高すぎた)結果、セールスは全く奮いませんでした。

Studio Q 渾身のデザインコンセプト HONDA GB1000R

とにもかくにも、SC80 CB1000Rは何とか世には出たわけで、あとはカウルを付けるだけ・・・・・。
すぐにHONDAは販売のテコ入れとして、カウルモデルを投入するだろうと思っていましたが、噂は立っては消えを繰り返し、なかなか出てきません。

GB1000R Kit を想定したフィッティングCG


StudioQもデザイン上は数年間トライを繰り返し、最適解まで一旦はたどり着いていたで、答え合わせを密かに楽しみにしていました。


市場はインターセプター登場への期待値を一気に高めて行きましたが、HONDAはユニークな判断を下します。
2022年夏、GBクラブマンの名を冠して復活か?!などと噂されながら現れた待望のカフェレーサーは名前を「HAWK11」としましたが、蓋を空ければ、アメリカンバイクであるレブル1100をベースのカフェレーサーでした。
価格が高く、そもそも販売が振るわなかったCB1000Rをベースにすることに余程リスクを感じたのでしょうか。
着座位置の低い、深く落ち込んだフレームは、どう見てもカフェレーサーに向いておらず、タンクやらサイドカバーやらデザインして帳尻を合わせていますが、IC4コンセプトとは似ても似つきません。

まあ昔から、マーケティングの弱さはHONDAのお家芸であり、その分技術は確かな訳ですが、ある意味、他のメーカーとのバランスを取るという意味では、一周回ってこれで良いのかもしれません。

方や、もう一方の雄であるYAMAHAも活発な動きを見せており、XSR900をより一層レトロ寄りにした新型を発売し、ガッチリとユーザーのハートを鷲掴みにしました。
フレームのどこかに”DELTA BOX”とでも書いてあるのではないか?と探してしまいたくなるほどにレトロな造形美は、なんとも心にくい演出です。
コロナ禍もあってか日本への車両割り当てが極端に少なく、今も欲しくても買えないという悩ましい状態が続いていますが、一方で、WoodStockフェスなどには80年代のレーサーレプリカカウル(TZR風)を与えた試験的追加モデルを走らせたりするなど、市場の反応確認に余念がありません。

市販化が決定したXSR 900GP


このように、ハーフカウルでむき出しのエンジンを見せる事で、軽快な印象を与えるカフェレーサーの世界観は、80年代と現代を行き来しながら今だに洗礼され続けており、単なるブームと言う枠を超え、じわりと広がりつつあります。

古き良きエッセンス

前述したように、カフェレーサーと言うジャンルは意外とモチーフとなるアイコンは決まっていて、アレンジの幅が狭い為、それらアイテムを抑えることで、簡単にそれっぽく見せることが可能です。
これはノートンタイプと言われるタンクでFRP製ですが、微かに前方にエグリの効いている珍しい物。
ノートンタイプは長くてボテっとしたソーセージにような本体に、ニーグリップする膝部分のが抉られただけの、なんの捻りもないシンプルな造形が特徴です。

ノートンのスタンダードは上記よりもこっちでしょう。
ボッテリしているのは共通でも、BODYが更にふっくらしてますね。
ニーグリップのエグリはそんなにシャープではなく、全体的にふっくらしたパンみたいな造形です。

一方こちらはAJSタイプと言われている物。
ノートンタイプを更にキツく抉ったもので、絞りまくった結果、股間部分が異様に狭くなっている一方、TOPのふくらみはそのまま残っている為、随分とエラが張っている様に見えるのが特徴です。
両サイドの膨らみも、ノートンタイプのように水平ではなく、フレームを覆いかぶせるように下に伸びます。

アイコンはマフラーにもあります。
コンチタイプのマフラーは先端がテーパー形状になっており、歯切れのよい鼓動音が今にも聞こえてきそうですが、写真はヨシムラジャパンが過去に発売していた”サンパー”と呼ばれている変わり種。
独特なアルミチャンバー室を持っており、排気脈動を計算して作り込むことで、消音しつつもパワーを絞り指すと言う、矛盾した要素を叶えてしまう夢のようなマフラーでした。
その独特な形状から「子持ちシシャモ」などと揶揄する人も居ましたが、好き嫌いは分かれども、ユーザーから長く愛されるユニークな商品でした。

カフェレーサーと言えばフェアリングにも拘らない訳には行きません。
写真はノートンタイプのマスコットカウルと呼ばれるもので、殆ど防風効果はありません。
ヘッドライト形状をそのままトレースした黄色いゼッケンプレートが何ともそそりますが、こうなると、アッパーカウルというよりも、ゼッケンプレートでしょう。
過去日本では、ブルックランズさんなどで販売されていた時期もありましたが、今は手に入りませんので中古パーツで見つけたら迷わずゲットです。

こちらはペイトンプレイス製のオーソドックスな形状のロケットカウルです。
作りは少々キャシャですが、細身のSR400辺に合わせることを前提とした幅や、均整の取れた形状が非常にプレーンで、合わせやすいパーツです。

7インチのヘッドライトを飲み込みながらも、精いっぱい寝かせたスクリーンが、なんともクールです

そうそう、今も手に入りやすいロケットカウルと言えば、KDCレーシングサービスさんが、汎用品ロケットカウルとして、SUZUKIバンディッド400LTD用のロケットカウルをモチーフに、ヘッドライトの部分の穴を塞いだレース用カウルを現在も安価で売っています。
元々はレース屋さんだから”転倒による破損”が大前提にあり、ずっと継続販売してくれつつ価格もリーズナブルなところがナイスです。
何よりうれしいのは、輸入物のワンオフ製品とは違い、バンディッド用のカウルスクリーンがフィットする事で、リペアに不安がない事です。
形状が気に入るならば、選んでみるのも手でしょう。

最後はシートです。
スリッパみたいとか、汲み取り式の便器かよとか、とにかく悪く言われがちなシングルシートですが、特徴としては短く、スポンジは薄いです。
リアタイヤは、丁度半分はみ出る様な位置で終わるので、シート本体は前後に異様に短く、つまりは自由な乗車姿勢が取れません(小物入れはありません)。
シートの表皮は、パテッドや、タックロールを入れることで更に雰囲気を出せるものの、このスポンジ厚だと、乗り心地など期待できません。
言っときますが、カフェレーサーでツーリングなんて、くれぐれもしない方が良いです(笑)。

カフェレーサーと言う文法

前述のように、カフェレーサーのマストアイテムはアイコン化している為、突き詰めると結局みんな同じ様な形になってしまいがちです。
写真は、文法通り短いシートからリアタイヤが半分が飛び出しますが、このようにアースカラーやサーフカラーなど、意外性のある個性的なカラーリングで纏めるのもありです。
外装はシンプルな構成なので、変わった色を選んでも面積が狭く、纏めることが可能です。

クラシックなラジアルパターンのタイヤを履いたとてそれは同じ。
スイングアームを延ばすか?シートを短くするか?どっちにせよベース車両の寸法に合わせて、Rタイヤの出面を管理・調整する事が大事です。
又、このようにネイキッドにする場合は、Fフォークからライトハウジングをなるべく離さないようにすると、塊感が出てフロントセクションが引き締まります。

ファットタイヤを履いてボバー風にしても、やっぱりレイアウトは変わりません。
ロングタンク、Rタイヤは飛び出し、ライトはフォークに埋め、出来るだけ存在感を消してますね。
これをやるには、ライトは汎用の7インチではなく、5.75インチに落とすことが多いのですが、この5.75インチのヘッドライトは主に補助ライトとして採用されている小径サイズなので、レンズカットされていない事が多いのが実情です。
Hi/Loバルブ突っ込んでも、上手く光軸が出ないことが多く、車検を通すには商品を大分吟味する必要があります。
コツとしては、LEDを選ぶ場合は、ケルビンではなくルーメン表記でチェックするといいです。
ケルビンは色温度の事なので、見た目がいくら白く、眩しくて明るいと感じても、車検時に必要な”光量”を満たせるとは限りません。
車検基準を満たすには、経験上、最低でも13000ルーメンは必要ですので、それ以上の光量が出るハイパワーのLEDライトや、LEDバルブで臨みましょう。
そのため、軽く安価な樹脂レンズではなく、発熱での変形に耐えるガラスレンズは必須ですし、バルブを買う場合は”車検対応”などという売り文句は信じず、ケルビンではなく”ルーメン”を厳しくチェックする事が大事です。

さて、そんなガチガチな文法の中でも、唯一アレンジすることが出来るとすれば、こんな風に頭でっかちなアンバランスさが”オリジナリティ”に繋がると言う例です。
バイクのデザイン哲学上は通常”アッパーカウルがフロントアクスルシャフトより前に出ることはNG”なのですが、ことカフェレーサーに関してのみ、それを犯すことが出来ます。
アッパーカウル、ガソリンタンク、シングルシートと言う、車両上半分の外装のグループは、横から見た時の中心点をずらし、バイクの前方である(この写真で言う右側)に寄ってもOKです。
陸上選手のクラウチングスタートのように”行くぞ!”という前のめりな雰囲気が、停車している佇まいいにすらスピード感を加えてくれるからです。

この様に細やかな定義を守りつつ「正しくアンバランスな物を作る事」。
それがカフェレーサーを作ると言う事なのです。

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